横綱照ノ富士(31=伊勢ケ浜)が、合口のいい平幕の朝乃山(29=高砂)との約2年ぶりの対戦を制し、優勝に一歩、前進した。

朝乃山の大関時代に、番付で下だった照ノ富士とは5度対戦し、すべて照ノ富士の勝利。朝乃山が攻め込むも、土俵際の詰めを欠いたりする場面が多かった。

2年前までを再現するかのように、朝乃山が左おっつけから、その左を差して攻め込むが、後退しながら照ノ富士は右の小手に巻いて、渾身(こんしん)の力で打った小手投げで勝負を決めた。1敗と単独トップをキープした照ノ富士と、3敗に後退し優勝争いから大きく後退した朝乃山。明暗がクッキリ分かれた。

報道陣のリモート取材に応じた日本相撲協会の八角理事長(元横綱北勝海)は、取組前に「いい相撲を期待したい。ガップリになって、お互いに力を出し合って」と期待していた。勝負は、時間にすれば3秒7と短かったが、勝負が決すると同理事長は「(朝乃山は攻めを)考えたけどね。(相撲は)悪くない。いい当たりだった」と朝乃山の攻めを評価。その上で「照ノ富士がドッシリしていたということ」と番付最上位の盤石ぶりもたたえた。

土俵下で見守った浅香山審判長(元大関魁皇)は、照ノ富士の気迫を見逃さなかった。「気合の入った厳しい相撲でした。仕切っているときから気迫が、照ノ富士から感じるものがありました」と取組前の横綱の精神状態を察知。朝乃山についても「しっかり当たって攻めたけど、タイミング良く決まった感じでした。(横綱は)踏み込まれていても余裕はあった」と、やはり横綱の強さを評価していた。