「令和の怪物」がついに優勝争いトップで千秋楽を迎える。昭和以降最速タイの所要3場所で新入幕の西前頭17枚目・伯桜鵬(19=宮城野)が、単独トップの北勝富士を突き落とした。

千秋楽は同じ3敗の関脇豊昇龍と対戦。貴花田(のちの横綱貴乃花)以来の10代、新入幕109年ぶり、史上超最速の所要4場所と歴史的な優勝に挑む。豊昇龍は勝てば大関昇進の目安、3場所合計33勝に到達する。優勝は北勝富士を含めた3敗3人に絞られた。

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幕内前半戦ながら異様な雰囲気だった。大歓声が渦巻く館内で、ザンバラ髪の怪物は平然としていた。「歓声が大きかったのでそれを力に集中できた」と伯桜鵬は言ってのけた。大一番でも乱れない心。鋼のメンタルで北勝富士と対峙(たいじ)し、突き落とした。

朝の稽古場で師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)から「(北勝富士は)左おっつけが強い。そこにはまるな」とアドバイスされた。下からあてがっていくイメージも「仕切っている時に立ち合いを変えてしまった」。左四つがっぷりは想定外。北勝富士に攻め込まれたが「土俵際は残せると思ったんで、あせってはないです」。物言いがついた相撲も勝利を確信していた。

優勝は3敗3人に絞られ、千秋楽は豊昇龍との対戦が組まれた。優勝すれば大相撲史を塗り替える快挙だが「まずものすごい憧れの舞台に上がってきてその中で優勝は1つの夢だが、ものすごく遠い存在。自分は優勝できるレベルじゃない。明日の相手に勝つ準備をしていくだけ」と言った。

兄弟子で鳥取城北高の先輩でもある間垣親方(元幕内石浦)が「怪物の原点」を証言する。「(伯桜鵬が)高2で稽古した時は全部勝ったが、3年になると五分かそれ以上だった。力は五分でもうまさ負け。特に頭を使った修正能力は高校生離れしていた。今の大相撲界でも屈指だと思う」。その言葉を裏付けるように今場所は連敗がない。優勝を争う活躍に「想像を超えますね」と驚きを隠さない。

運命の千秋楽。大きなプレッシャーがのしかかるはずだが、「新入幕はあまり意識していない。(優勝争いを)意識するというか、注目されている。自分は今日の相手に準備して結果的に勝った。そういう思いはないです」。鋭い眼光は千秋楽の相撲だけを見据えている。【実藤健一】