大関経験者の朝乃山(29=高砂)が、目標とする2桁白星と年内の三役復帰に向けて白星発進した。

同学年の関脇若元春を、初顔合わせだった先場所に続いて破った。先場所は初日に明生に敗れており、2場所連続で初日黒星なら、自身初となっていたが回避。2日目は新関脇の琴ノ若戦。大関昇進を目指す関脇相手に2連勝を目指す。

立ち合いは、考えるよりも先に体が動いた。「相手が右のど輪でくるのが見えて、うまく下からはね上げられた。のど輪できた時は勝手に反応する。体に染み込んでいる」。とっさの左おっつけから左を深く差し、さらに右もねじ込んで、もろ差しとなり寄り切った。けんか四つの相手だけに、のど輪を許していれば「あのまま左四つで、相手の形になっていたと思う」と、瞬時の判断が白星につながった。

7月の名古屋場所は、左上腕二頭筋部分断裂で途中4日間、休場した。さらに8月27日に地元富山県の氷見市で行われた夏巡業では、朝稽古の際に右足親指も痛めた。その後は相撲を取る稽古ができない日が続いたが、6、7日に前頭千代翔馬、十両欧勝馬が出稽古に来て、関取衆を相手に「腕とか足は完治していないので(2日間ともに)15番ぐらい」と、相撲を取る稽古を再開した。場所前の調整は万全とはいえなかったが、今場所前は「休む気はない」や「やるしかない」と力説するなど、気持ちは万全で迎える場所前以上に高ぶっていた。

先場所は再出場後に4連勝で締めて、千秋楽に勝ち越しを決めた。痛めた左腕を悪化させないため、速い決着、積極的に攻める相撲を心がけたことが奏功。「けがする前よりも、内容が良かったという声をよく聞きました」と、自信を深めた。今も左腕と右足親指は「完治はしていない」という。特に立ち合いの際の蹴り足となる、生命線ともいえる右足親指は「痛みがある」。不安要素ではあるが「自分の相撲を取れば結果はついてくる。前に出れば、痛みは問題ない」ときっぱり。今場所は一段と、積極的に攻めることを心がけている。

精神的にも新境地に達した。けがをしていることで、かえって「万全でない分『負けてもいいや』と、思い切りいける」と、自分の相撲を取り切ることだけに集中。患部は痛み止め薬などを服用することなく「冷やすぐらい」と、神経質になりすぎないことも、好内容に結び付いている。

年頭から今年の大きな目標として「年内に三役に戻る」と掲げてきた。今場所前には「今は三役が詰まっている状態。三役に戻るには大勝ちしないと。10勝以上したい」と話していた。この日対戦した若元春は、大関とりだった先場所は9勝止まりだったが、今場所の成績次第では、大関昇進の可能性もある。その相手を破り、8場所連続勝ち越しに向けて勢いをつけた格好だ。【高田文太】

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