3場所ぶりの出場の横綱照ノ富士(32=伊勢ケ浜)が復活優勝を果たした。

本割で霧島を寄り切りで退け、琴ノ若との優勝決定戦に臨んだ。決定戦では寄り切りで破り、昨年夏場所以来となる4場所ぶり9度目の賜杯を抱いた。優勝回数ではモンゴル出身力士でかつて同じ伊勢ケ浜部屋に所属した元横綱日馬富士に並んだ。

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横綱とは、こういう地位なんだぞ-。応援してくださる人に照ノ富士が、そう表現した千秋楽の土俵でした。いい仕事をしました。「強かった」という、そのひとことです。本割は右が入っただけで霧島が浮き上がりました。久しぶりに横綱相撲を見た気がします。優勝決定戦は立ち合いで当たる角度が良く、これは負けた琴ノ若も見習うべきところです。不利なもろ差しを許しても余裕がありました。打開しようと左から小手で振った場面も、思い切った投げではなく、流れの中で前に出ながら琴ノ若の体勢を崩すための仕掛けでした。すぐに右が入った後も、状況を冷静に判断して左を巻き返すタイミングを図っています。狙い通りにもろ差しの体勢が取れたことを含め、一連の流れは圧力をかけているからこそ出来たものです。

よくここまで盛り返しました。前半5日間の相撲からは「引退」の2文字が頭をよぎった人もいたと思います。休場明けの体が徐々に土俵になじみ、上手を取れる相撲が多くなってから復活してきた印象です。そして最後は昇進をかける霧島と琴ノ若に、力の差をまざまざと見せつけました。これが横綱です。後輩たちのレベルアップのためにも、まだまだ壁となって立ちはだかってほしいと思います。(日刊スポーツ評論家)