大関経験者で西前頭筆頭の朝乃山(30=高砂)が、新大関の琴ノ若を破って今場所初白星を挙げた。体当たりの立ち合いから、前に出続けた。おっつけて体勢を立て直そうとした相手を、休まず攻めて最後は押し出した。過去は互いに三段目だった16年に1度、幕内で昨年に1度と、2度顔を合わせていたが、ともに白星。3度目の対戦でも勝って、今場所の成績を1勝1敗と五分に戻した。今月1日に30歳の誕生日を迎え、30代として初白星にもなった。

取組後は「大関(琴ノ若)は器用な相撲を取りますので、自分から攻めるように心掛けて相撲を取りました」と振り返った。この日ももろ差しを狙った立ち合いを見せるなど、相手のうまさを封じて勝ちきった。今場所前には、佐渡ケ嶽部屋に出稽古し、琴ノ若と胸を合わせてきたが、その成果については「ちょっと分からないですけど、前に攻めて相撲を取れたのでよかったです」と、冷静に話した。「いい緊張感がありながら、まだ2日目ですけど、あと13日間相撲を取って結果を出していきたい。声援が1番力になります」と、声援に感謝した。

前日初日は大関貴景勝に敗れた。立ち合いから前に出たが、前のめりになったところをはたき込まれた。取組後は「しっかり踏み込んで、取ってつかまえればよかったんですけど。止まってはたかれた時、足がついていってなかったですね。もう必死なので」と、反省の弁を並べていた。初日から大関以上と連戦となったのは、新三役の小結だった19年九州場所以来、実に4年4カ月ぶり。気合が空回りした格好となった初日から、気持ちを立て直して白星をつかんだ。

今場所前は精力的に出稽古を積んできた。先場所までの4場所は、左上腕二頭筋部分断裂、右足親指痛、左ふくらはぎ肉離れ、右足首捻挫と、立て続けに別のけがに見舞われた。万全の状態で出場できていなかったが、ようやく場所前から稽古を積んできた中で、黒星発進となっただけに、悔しさをこの日の土俵にぶつけた。

琴ノ若の成長は、ひしひしと感じていた。2度目の顔合わせとなった前回対戦した昨年秋場所は、自身が西前頭2枚目、琴ノ若が関脇。上手投げで白星をつかんだが、取組後、初顔合わせの三段目当時と比べて「あの時とは全然違う。力も技も」と、圧力もうまさも段違いに成長していると感じていた。だからこそ、気を引き締めて臨んで、この日の白星につなげていた。