大関経験者で西前頭筆頭の朝乃山(30=高砂)が、苦手の関脇大栄翔から3年ぶりに白星を挙げ、連敗を「2」で止めて3勝4敗とした。ここぞで見せる頭から当たる立ち合いで、大栄翔の圧力に対抗。相手の突き、押しを下からあてがい、休まず前に出て押し出し。最後は体を投げ出し、前のめりに倒れたが、相手の方が先に土俵を割った。「何場所も上体を起こされていたので、しっかり下からあてがうようにして攻めた。最後の(相手の)はたきが際どくて、負けか物言いかと思った」。辛勝にも、物言いはつかずに勝ちきった。

大栄翔には、取組前までの対戦成績は7勝14敗で5連敗中と、合口は悪かった。最後に勝ったのは、自身が大関、大栄翔が小結だった21年夏場所。「同学年だし、意識するものはある」と、3年近く勝てておらず、悔しさは募っていた。「(大栄翔の)突き、押しの威力が強い。場所前に肌で確かめたかった」と、場所前に追手風部屋に出稽古に行くなど、大栄翔に勝つことを今場所の1つの目標にしていた。5日目は大関豊昇龍に、6日目は前頭熱海富士に、得意の右四つの良い体勢をつくりながら連敗。嫌な流れに陥っていたが、苦手を撃破し、折り返しの8日目を良い形で迎えることになった。

前日6日目は、右の相四つの熱海富士に、何度も勝機を逃す形で敗れた。立ち合いからすぐに右を差して左上手を引き、万全の体勢で寄り立てた。土俵際で残られ、押し戻されても、再び寄って出た。それでも俵を伝って残られると、さらに前に出たが、体勢を入れ替えるようにして上手投げで逆転された。取組後は険しい表情で「土俵際まで持っていったのに、寄り切れなかった自分が悔しい」と話し、唇をかんでいた。

5日目の豊昇龍戦は、体勢が整わないうちに攻め急いで敗れていた。その反省から、熱海富士戦は慎重になった。攻守のバランス感覚を見失ったようで、6日目の取組後は何度も頭を抱え、苦悩の表情を見せていた。それでもこの日の取組後は、吹っ切れたように「迷っていても仕方ない。今日の相撲は、右を差したら出るしかないと思っていた」と語った。苦手撃破で、迷いを払拭(ふっしょく)し、まずは白星先行を目指して8日目以降に臨む。