アメリカの老舗スポーツメーカーのスポルティング社は、野球用具をヨーロッパで100年前に売ろうとしたが失敗した。足の文化たるサッカー人気が根強く、野球は見向きもされなかった。で、2024年のパリオリンピックでは除外された。なぜ野球(男子)とソフトボール(女子)は人気がないのだろうか。

野球とソフトボールは、足の文化でもあるが手の文化の色彩が強い。そこに日本人の好む器用さの競演があり、模擬戦争的ゲームとなっていて軍隊の対決と映った。富国強兵策の国にあっては、作戦が勝敗を左右するゲームが好まれたのかもしれない。が、英文で「武士道」を書き、世界中に日本人の思想を広めた新渡戸稲造は、明治期の終わりに野球害毒論の先陣を切った。多分、野球人気への嫉妬心だったかもしれない。

義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠という武士道の教えを普遍的とした新渡戸は、野球を巾着切りの遊戯と決めつけた。常に相手の考えのウラをかく作戦、これが教育的に有害であると考えたらしい。投手のコントロール、球種の研究、チームワークの重要性、武士道にも通じる一面があるにもかかわらず、野球嫌いだったようだ。

パリのオリンピック組織委員会が、野球とソフトボールを除外したのは、あくまでもヨーロッパで人気がないばかりか普及していないからであろう。レスリングもボクシングも人気が下落傾向にあるためか、除外される可能性をはらむ。伝統競技がピンチ、スケートボードやブレイクダンス、スポーツクライミング等の都市型の新しいスポーツに人気がある。

日本は柔道、韓国はテコンドーをオリンピック種目にするため、世界中に政府が協力して指導者を派遣して普及させた。野球とソフトボールにその熱気が感じられず、28年のロサンゼルス大会まで待つつもりなのか。それでは正式種目としては定着しない。野球とソフトボールの普及を本気になって取り組んで欲しい。野球は、すでに日本の国技なのだ。吉田義男氏が、フランスで教えたけれど、残念ながら実らなかった。