AKB48田野優花(20)に実りの秋がやってきた。出演舞台「THE CIRCUS! エピソード1 The Core」が9月24日によみうり大手町ホールでスタートして、24日の博多公演まで。その後は、28日に初主演映画「リンキング・ラブ」が全国公開する。今のAKB48グループでは、HKT48/STU48指原莉乃(24)以外では、最も目覚ましいソロ活動をしているメンバーの1人となった。

 「THE CIRCUS!」では、行方不明の兄を案じながら、母国の民主化運動に身をささげる人気歌手ナディア役を演じている。150センチと小柄だが、美脚をあらわにしたミニのドレスで歌い踊る姿は、20歳の大人の女性になったからこそ。2年半前に初舞台で初主演を務めた「ウィズ~オズの魔法使い~」の少女ドロシーからの、大きな成長を感じさせる。

 すでにAKB48の中では、屈指のダンス能力と歌声と言われているが、今作では、派手なアクションにも体中をアザだらけにして奮闘している。ミニスカートからのぞく太ももに大きなあざがあるのは、毎回全力で臨んでいる証しだ。

 演技のキャリアは3年。アイドル活動と平行しての過去6作品の舞台で磨いただけだが、感情を豊かに表現できるそれは、肩書ありの客寄せパンダとして出演しているわけではないと、納得させる力がある。

 私が観劇した回では、「ウィズ」でも共演していた年上の先輩ダンサーが「本当にいい女優さんになってきた。田野ちゃんの芝居には魂があるから、観客の心にダイレクトに響いてくる。もちろん、アイドルだからかわいいのだけれど、芯の部分は同性でもほれてしまうほどにかっこいい」と評した。

 付け加えるならば、存在感が強いにもかかわらず、決して共演者の邪魔になる色や空気は出さない。アイドルが1人で舞台に出ると、マイペースだったり、自分の世界観だけで完結させてしまう子をよく見かけるのだが、田野は違う。チームプレーや調和の要素を備えているところが、舞台のオファーが数多い理由の1つなのかもしれない。

 次は、主演映画「リンキング・ラブ」の公開だ。演じるヒロイン美唯は、バブル時代にタイムスリップして大学生の両親のキューピッドに奔走する。父の心をつかみたい女子大生の母を誘い、AKB48の曲でアイドルグループを結成する物語。田野が石橋杏奈(25)ら女優陣たちを導きながら「恋するフォーチュンクッキー」や「フライングゲット」を踊るシーンは、なかなかの見どころだ。

 舞台では、ある種の貫禄をつけてきた田野だが、この映画で「フライングゲット」のセンターで歌う姿は、紛れもなく本物のアイドル。田野本人が、アイドルと本格的な女優のはざまに差しかかっている時期だけに、今しか見られない絶妙な演技が、この両作品で楽しめる。