AKB48が8日、AKB48劇場でデビュー12周年記念特別公演を行い、3年ぶりの大規模な組閣を行った。「組閣」と聞くと大げさだが、簡単に言うと、チームの所属メンバーが変わる、学校のクラス替えのようなものだ。

 今回の組閣の目玉は、キャプテン人事だった。もともとキャプテン制度を敷いていないチーム8を除くと、チームA、K、B、4の4チームとも、キャプテンが代わった。

 中でも、最も「しにせ」のチームAは、一般にはあまり聞き覚えのないメンバーがキャプテンになった。岡部麟(21)。そもそも兼任すら予測していなかったのか、発表を受けて「不安なんですけど、ゆいはん(横山)をたくさん頼って、頑張って…まとめていいのかな?」と、とまどいを隠せない様子だった。

 岡部は都道府県代表が集うチーム8に所属する、茨城県代表メンバー。デビュー当初の取材ノートを見返してみると、「絵が得意 声が前田(敦子)に似てる」と記してあった。

 何となく存在が気になりだしたのは、15年春。日刊スポーツが毎年、掲載している選抜総選挙連載の取材でのことだった。例年、立候補メンバー全員のサイン入りチェキをプレゼントするのだが、岡部が書くチェキはいつも独創的かつ芸術的だった。サインだけでなく、ポップでかわいらしいイラストを添えてくる。ファンがもらったら、うれしいに違いないだろう。イラストのセンスを買われ、チーム8のマスコットキャラクターもデザイン。今年の選抜総選挙では場内案内イラストも手がけた。荒天による中止で、日の目を見ることがなかったのは残念だった。

 話をしてみると、さらに興味がわく。とにかく、観察力が鋭いのだ。ある時、チームメートのことを聞いてみた。「あの子は髪形を変えてかわいくはなったけど、没個性。前の髪形に戻した方がいいと思うんです」、「あの子はいつも毒舌だけど、無理をしている気がするんです。本当は優しい子なのを知ってるから」などなど…。辛口にも聞こえるが、愛情のスパイスも忘れないところに、優しさを感じる。

 以前から人間観察が好きだったという。「親友やクラスメートたちのいいところに気づいたら、それを取り入れてきたんです。だから、今の私はいろんな人のいろんな要素からできているんです」。観察をした上で、それを自分に置き換えてシミュレートする。そんなことを繰り返し、いいとこ取りで歩んできた人生だという。

 AKB48の最新シングル「11月のアンクレット」で、岡部は初めて選抜入りを果たした。選抜入りを機に、岡部をインタビューした。「ここまで来たら、自分のことだけを考えます。私が結果を出して選抜に入り続ければ、(チーム8のメンバーには)自然と何かが伝わるし、広がるはず」と言い切ったのが印象的だった。チーム8は横のつながり、絆が強いチームとしてファンに知られるが、岡部はチームも大事にしつつ、個人戦の意識を強く持っている。

 結成当初のチームAは、前田敦子を筆頭に、高橋みなみ、篠田麻里子、板野友美、小嶋陽菜、峯岸みなみと個性派がそろっていた。大島優子、宮沢佐江、秋元才加らの「絆のチームK」とは対照的な、「個性の集まり」がかつてのチームAだった。新チームAの顔ぶれを見てみると、エース候補は向井地美音、小栗有以、モデル系は後藤萌咲、長久玲奈、人見古都音、ビジュアル担当なら加藤玲奈、谷川聖、早坂つむぎ…と人材は豊富だ。「芸能界は個人戦」と主張する岡部のもと、個性派集団の復活はなるのか、注目したい。