第23回助演女優賞 受賞発表記事

助演女優賞に輝き喜びを語った蒼井優（撮影・中島郁夫）

【受賞発表記事】

　新人賞から４年。蒼井優（２５）が早くも授賞式の舞台に帰ってくる。ただ、「おとうと」での助演女優賞受賞には「耳を疑いました」。蒼井にとって初の山田洋次監督作品だったが、完成したフィルムを見て「今まで山田監督とご一緒されてきた役者さんたちには到底届いてないなって自分で感じてた」からだという。

　自己採点は厳しいが、離婚や再婚を経験して家族の絆を理解し、成長していく娘を巧みに演じた。「２時間で２回結婚しますし（笑い）、感情表現がすごく難しかった」と演技派女優も悩む難役だった。

　山田監督の要求にも必死に応えた。「私は体重を移動させながらしゃべるクセがあるんですけど、監督に『真っすぐ立つことを意識しなさい』と言われて。スタッフの方にも『セリフを言う前にまばたきをしないで』と言われたり」。山田組の撮影現場はすべてが勉強だった。「一生懸命やったなって記憶があります。賞はそのご褒美というか、まだ頑張りなさいって激励してくださってるのかなと思います」と分析した。

　今年は個展を開き、ＮＨＫ大河ドラマ「龍馬伝」に出演し、初の時代劇映画「雷桜」にも挑んだ。「いろいろな現場を経験させていただき、いろいろ学びましたが、私はすぐには応用できない不器用で…。何十年かかってもこれが自分の身になっていたら、支えてくださった皆さんにお礼ができるなって気がします」。

　今や日本映画界に欠かせない若手実力派女優だが、その姿勢はどこまでも謙虚。これが映画人に愛される理由かもしれない。【今西孝江】

［2010年12月2日　紙面から］

　◆蒼井優（あおい・ゆう）１９８５年（昭６０）８月１７日、福岡県生まれ。０１年、岩井俊二監督の「リリイ・シュシュのすべて」で映画デビュー。「花とアリス」「ニライカナイからの手紙」などに主演。０６年「フラガール」で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞をはじめ多くの映画賞を受賞。来年２月に江口洋介と共演した「洋菓子店コアンドル」が公開予定。１６０センチ、血液型Ａ。

　◆おとうと　東京で薬局を営む吟子（吉永小百合）は、１３年前に夫を亡くしたが、小春（蒼井優）を育て上げた。小春の結婚式に、大阪から弟鉄郎（笑福亭鶴瓶）がやって来る。酒を飲んで暴れる鉄郎にあきれる吟子だが、弟を憎みきれない。そんな中、大阪に帰った鉄郎が病院に運ばれたと知らせが入る。山田洋次監督が故市川崑監督の「おとうと」（６０年）にささげたオマージュ。

助演女優賞・選考経過

　蒼井と「悪人」などの満島ひかり「孤高のメス」の夏川結衣で意見が分かれた。「『おとうと』の蒼井さんの演技は、こちらが泣いちゃうくらいうまい」（木下博通氏）、「『悪人』は満島の演技があったから主演の２人が生きた」（渡辺武信氏）、「夏川さんは素晴らしかった。主役を立てたけど自分も立てた」（桑田潔氏）。投票で蒼井が過半数を得て２人を退けた。