03年と06年にフジテレビ系で放送されたドラマシリーズ「Dr.コトー診療所」が16年ぶりに映画化され、16日から公開された。

日本の西の端の孤島、志木那島を舞台に、診療所に赴任してきた医師コト-を巡る物語は、実際の年月同様にドラマの終わりから16年後を描いている。

コト-役の吉岡秀隆を始め、キャストはドラマのまま。が、そこには年月の流れがあり、新たに研修医役のKing&Prince高橋海人と、地元出身の看護師役、生田絵梨花が加わっている。

ドラマで漁師タケトシ(時任三郎)の息子タケヒロ役で出演していた子役の冨岡涼は、実は俳優を辞めて会社勤めをしているそうだ。ドラマ以来この作品を手掛けている中江功監督は、その会社に出向いて経営陣を説得。この映画の撮影期間中だけ、彼を借り出すことに成功した。「同一キャスト」へのこだわりは徹底している。

そのかいあって、タケヒロの帰郷シーンで、他のキャストとの間に生まれた温かな空気は、半端ないリアリティーを感じさせる。

新顔の高橋、生田を絡めた冒頭20分が見事だ。ロケ地与那国島の美しい自然を一気に切り取り、漁船事故の対応でコト-の腕前を印象づける。そして彼が自身の体の異変に気付いていることもさりげなく折り込まれる。ドラマを見ていた人も見ていなかった人も、この20分で「志木那島」の世界に引き込まれ、その後のストーリーの行方に気をもむことになる。

スペシャルを含めて24本のドラマを撮りきった直後、中江監督には「正直『Dr.コト-』はやり尽くした」感があったそうだ。だからこそ「やるからには」と16年間、折々に考え続けた「続編」の内容は濃密だ。

大型台風に見舞われる終盤のクライマックス。コト-の妻となり、臨月でも働き続ける看護師彩佳(柴咲コウ)の奮闘、そして自らの体を顧みずにメスを持ち続けるコト-…そこまでやるかという命のやりとりが繰り広げられる。

銀髪にしても、やはり童顔の吉岡。延べ19年間の孤軍奮闘にもみずみずしさを失わないコト-の魂が染み出るような演技だ。わいわいと相変わらずやかましい島の人々は、一見年月を感じさせないようで、ちょっとした動作やセリフの間合いにリアルな年輪を感じさせる。

泉谷しげるのシゲさんがやっぱりいい。ちょっと若すぎる感じもするが、多少のクセがあっても、登場人物の誰もが胸に秘めている良心を、今回もこの人の行動が端的に示している。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)