昼は実直な男が、夜になると悪を成敗する「必殺仕事人」に変身する。演技巧者のデンゼル・ワシントンにとっては、めったにオファーが来ないこのアメコミ・ヒーローのような役が楽しくて仕方がないのだろう。

14年にスタートしたシリーズも10月6日公開の「イコライザー THE FINAL」で3作目となる。

主人公は元CIA工作員のマッコール(ワシントン)。最愛の妻を亡くし、生きる希望を失った男は、組織暴力に苦しむ市井の人々を救うことに新たな生きがいを見いだしていく。こわもての面々をまとめて秒殺してしまう圧倒的な戦闘スキルと、並外れた洞察力で、どんな強大な組織にも1人で立ち向かう。

今回の舞台はイタリア。ブドウ園にカムフラージュされた麻薬の集積場に現れたマッコールは、完全武装した屈強な男たちをせん滅し、何かをカバンに詰めて持ち去る。幕開けからいきなりのフルスロットルに圧倒される。前2作のアクションシーンが脳裏によみがえる。

この「何か」に彼がイタリアにやってきた理由があり、「シチリア」が連想させるマフィアが、今作の強大な敵となる。

ブドウ園からの脱出間際にひょんな事から重傷を負ったマッコールは、息も絶え絶えにアマルフィ海岸沿いの田舎町にたどり着く。人々の優しさに触れ、この地に安住することを考え始めた頃、この街にもマフィアの影が忍び寄る。

西部劇や日本の任きょうものに多く見られた古風な展開がちょっとうれしい。

一方で、マフィアは麻薬資金を通じて中東のテロ組織とつながり、イタリア全土を標的とした爆破テロがこの田舎町の出来事とリンクしていく。マッコールは古巣CIAの捜査官エマ(ダコタ・ファニング)に連絡を取り、テロ阻止のミッションを示唆する。

劇中でも新米エージェントのエマが「なぜ私なの。なぜ私に連絡したの?」といぶかるシーンがあるが、シリーズ通しでタッグを組む、手だれのアントワーン・フークア監督は、マッコールがブドウ園から持ち出した「何か」も絡めながら、最終盤で鮮やかに伏線回収のワザを見せる。

秒殺に説得力をもたらすワシントンの佇まい。マフィアのボスの背後から、マッコールが影のように現れるホラー映画のような演出…。そして「マイ・ボディガード」(04年)での初共演以来、親交があるというワシントンとファニングの何ともいえない親近感が、2人の間に結ばれた見えない糸を連想させる。

ドラマとアクションを織り交ぜた緩急のバランスが見事。快作だ。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)