往年の集団抗争時代劇をほうふつとさせた「十一人の賊軍」(24年)、現代の格差社会を戦国前夜の時代に映した「室町無頼」(25年)ー。時代劇復興に工夫を重ねる東映が、今度は推理とユーモアで味付けした。「木挽町のあだ討ち」(2月27日公開)は、直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞した永井紗椰子氏の同名小説が原作だ。江戸時代も末期にさしかかった1810年(文化7)、木挽町の歌舞伎小屋に集った面々が、機知と機転で武家の建前社会の裏をかく。

雪降る1月、歌舞伎小屋・森田座では「仮名手本忠臣蔵」が大入り満員で千秋楽を迎えている。その舞台がはねた直後、帰路につく芝居客の目を引く形で「本物のあだ討ち」の幕が開く。美濃遠山藩士・伊能菊之助(長尾謙杜)が、芝居客が見守る中で父を殺害した男、作兵衛(北村一輝)を打ち取る。この出来事は菊之助の美男子ぶりと併せ「木挽町のあだ討ち」として江戸の語り草となった。

その1年半後、菊之助の縁者で遠山藩から来たと名乗る加瀬総一郎(柄本佑)が森田座を訪れた。あだ討ちにはふに落ちない点がいくつもあり、それを解明に来たという。やがて、鮮やかな敵討ちの意外な裏側が明らかになっていく。

「室町無頼」の棒術で目を見張らせた長尾謙杜が、今回は「姫」の変装からの鮮やかな剣さばきで「時代劇ニュースター」を実感させる。冒頭の雪のあだ討ちから一転、総一郎が謎解きを行う森田座の舞台裏がなかなかの質感で描かれ、その「魔窟」ぶりがまた魅力的だ。

案内役の木戸芸者・一八に瀬戸康史、元女形の衣装方に高橋和也、そして親分格の戯作(げさく)者に渡辺謙と心憎い配役。それぞれに個性を立て、これをしっかり受ける柄本佑に安心感がある。源孝志監督の演出は、森田座の描き方に舞台愛がにじみ、セットの重厚さが軽妙な芝居を引き立てる。

「十一人-」や「室町-」の悲壮感と違い、幕切れにも心温まる。野村周平の殿様や、沢口靖子の賢母。一見意外な配役に思えるが、これが驚くほどハマっている。【相原斎】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「映画な生活」)