「アバター」シリーズで知られるジェームズ・キャメロン監督が、広島と長崎で2度被爆した二重被爆者、山口彊(つとむ)さんの実話を基にした原爆をテーマにした新作に着手することが明らかになりました。2009年に公開され、2031年まで続く「アバター」5部作を手がけるキャメロン監督にとって、1997年の「タイタニック」以来となる非「アバター」作品になる見込みです。

キャメロン監督は以前から、原爆被害者である山口さんを題材にしたチャールズ・ペレグリーノ氏のノンフィクション「ラスト・トレイン・フロム・ヒロシマ」の映画化権を取得しており、同書を基に山口さんの実話を映画化する計画が伝えられてきましたが、スケジュールの都合から実現せずにいました。

しかしこのほど、ペレグリーノ氏が原爆投下から80年を迎える2025年8月に新たに出版する著書「ゴースト・オブ・ヒロシマ」の映画化権も取得したことが明らかになり、2冊を合わせて2010年にこの世を去った山口さんの体験を中心とした映画の製作に取り掛かることが米メディアで報じられています。

29歳の時に広島と長崎の両方で原爆の被害にあった山口さんは、語り部の活動を通じて国連で演説するなど自らの被爆体験と核兵器根絶を国内外に向けて訴え続けてきました。胃がんで亡くなる直前に来日したキャメロン監督と病床で対面も果たし、「自らの役目は終わった。あとはあなたに託したい」とメッセージを伝えていました。

そんな山口さんの語り部としての活動を追ったドキュメンタリー「二重被爆〜語り部・山口疆の遺言」(稲塚秀孝監督)は、2011年にここロサンゼルスで上映会が行われており、筆者を含めこの作品を見た多くの人が原爆の悲惨さと平和へのメッセージをキャメロン監督がどう世界に伝えるのか、期待を膨らませています。

くしくも今年のアカデミー賞では、クリストファー・ノーラン監督の原爆の父と呼ばれた開発者に焦点を当てた映画「オッペンハイマー」が、アカデミー賞で作品賞や監督賞を含む7冠に輝いたばかり。現時点で、製作時期や内容など詳細は不明ですが、「背を向けることはできない」と話していたキャメロン監督が、「オッペンハイマー」にはなかった被爆者の視点にどう応えるのか期待が高まっています。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)