今年もアカデミー賞の季節がやってきました。現地時間3月2日に行われる第97回アカデミー賞授賞式を前に、知っていそうで知らない授賞式をより楽しむためのトリビアを紹介します。

■アカデミー賞の歴史

「ドライブ・マイ・カー」に贈られたオスカー像(2022年4月撮影)
「ドライブ・マイ・カー」に贈られたオスカー像(2022年4月撮影)

1927年5月に設立されたアカデミー賞は、映画芸術科学アカデミーの夕食会の一環として始まったとされています。第1回授賞式は、1929年5月16日にハリウッドのルーズベルト・ホテルでプライベートディナーとして行われ、約270人が参加して開催されました。1927年から28年にかけて公開された作品から選ばれた映画製作業界のアーティストや監督、その他の関係者をたたえる15のオスカー像が授与され、式典はわずか15分だったといわれています。ちなみに、当時はオスカー像という名称はなかったそうです。

■オスカーとは?

「ゴジラ-1.0」のオスカー像を手にする浜辺美波(24年3月撮影)
「ゴジラ-1.0」のオスカー像を手にする浜辺美波(24年3月撮影)

受賞者に贈られるトロフィーがオスカー像と呼ばれることから、アカデミー賞の愛称として「オスカー」という言葉が伝われています。なぜオスカー像と呼ばれるようになったのかは諸説あり、30年代にアカデミー賞事務局のスタッフが自身のオスカー叔父さんにそっくりだと言ったことがきっかけだったという説が有力です。元々は金メッキを施したブロンズ製でしたが現在は合金が用いられており、重さは約3.9キロ、高さは約34センチです。

オスカー像は映画芸術アカデミーによって売買が禁止されており、競売などで売却された場合は1ドルで同アカデミーによって買い戻されることになっているため、実際の価値はわずか1ドルしかありません。

■賞金は?副賞はある?

受賞者には名前が刻印されたオスカー像が贈られる以外、賞金や副賞などはありません。オスカーを受賞することそのものが名誉であることから、「オスカー受賞者」としてその後のキャリアで大作への出演やギャラのアップなど多大な恩恵を受けることになります。また、ノミネートされた人たちには旅行券や服飾品、家電や食品などさまざまなギフトが入った数万ドル相当のギフトバッグが贈られます。

■授賞式はどこで?誰が招待される?

ハリウッドの中心にある複合商業施設オベーション・ハリウッドに隣接するドルビー劇場で、現地時間3月2日16時から行われ、その模様はABCテレビ(日本ではNHK BS)にて生中継されます。授賞式に招待されるのは、各部門にノミネートされた候補者とその同伴者並びにそれぞれの作品の関係者、プレゼンテーターら。一般にチケット販売はされておらず、完全招待制となっています。

■今年の司会者は誰?

今年の授賞式で司会を務めるのは、コナン・オブライエン。2009年まで放送された深夜のトーク番組「レイト・ナイト・ウィズ・コナン・オブライエン」のホストとして知られるオブライエンは、ポッドキャスト「Conan O’Brien Needs a Friend(原題)」のホストとして活躍中で、エミー賞に31回ノミネートされ、5度受賞しているベテランです。

■今年の主要なノミネート作品は?

「エミリア・ぺレス」のジャック・オーディアール監督(25年2月撮影)(ロイター)
「エミリア・ぺレス」のジャック・オーディアール監督(25年2月撮影)(ロイター)
「ウィキッド ふたりの魔女」のアリアナ・グランデ(ロイター)
「ウィキッド ふたりの魔女」のアリアナ・グランデ(ロイター)
「ウィキッド ふたりの魔女」のシンシア・エリヴォ(ロイター)
「ウィキッド ふたりの魔女」のシンシア・エリヴォ(ロイター)

最多13部門にノミネートされたのは、カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞したメキシコの麻薬カルテルのボスが性転換手術を受けて女性として新たな人生を生きるサスペンスの要素を取り入れたミュージカル「エミリア・ぺレス」。作品賞、監督賞、カルラ・ソフィア・ガスコンの主演女優賞など主要部門に名を連ねています。また同作はスペイン語作品のため、非英語映画にもノミネートされています。続く10部門にノミネートされたのが、ホロコーストを生き延びたハンガリー系建築家の半生を描いた「ブルータリスト」とブロードウェーの人気ミュージカルを映画化した「ウィキッド ふたりの魔女」。他にも16日に行われた英国アカデミー賞で作品賞を受賞した「教皇選挙」も8部門で追随しています。

■日本の作品ノミネートは?

2024年3月、「ゴジラ-1.0」で米アカデミー賞視覚効果賞を受賞し会見を行った、左から浜辺美波、山崎貴監督、渋谷紀世子氏ら
2024年3月、「ゴジラ-1.0」で米アカデミー賞視覚効果賞を受賞し会見を行った、左から浜辺美波、山崎貴監督、渋谷紀世子氏ら
伊藤詩織さん(19年12月撮影)
伊藤詩織さん(19年12月撮影)

昨年は宮崎駿監督の「君たちはどう生きるか」が長編アニメーション賞、「ゴジラ-1.0」が日本作品として初めて視覚効果賞を受賞しましたが、今年は日本から3作品がノミネートされています。短編アニメーション部門に「あめだま」(東映アニメーション製作)、長編ドキュメンタリー部門にジャーナリストの伊藤詩織さんが監督した「ブラック・ボックス・ダイアリー」、短編ドキュメンタリー部門に山崎エマ監督の「小学校 それは小さな社会」が、候補入りしています。

■史上最多のノミネートは誰?

メリル・ストリープ(2016年撮影)
メリル・ストリープ(2016年撮影)

97年の歴史で最多ノミネートを誇るのは女優メリル・ストリープの21ノミネートで、「ソフィーの選択」(1982年)と「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」(2011年)で主演女優賞、「クレイマー、クレイマー」(1979年)で助演女優賞を受賞しています。

ちなみに最多受賞記録を保持するのは、故ウォルト・ディズニー氏で22回の受賞と名誉賞も4度受賞しています。オスカーという名前が広く知られるようになったのは、1934年に「三匹の子ぶた」で短編アニメーション賞を受賞したディズニー氏が、「小さなオスカーを持ち帰ることができ興奮している」と語ったことだったといわれています。

■世紀のハプニング

ウィル・スミス(2019年5月撮影)
ウィル・スミス(2019年5月撮影)
エマ・ストーン(12年1月撮影)
エマ・ストーン(12年1月撮影)

生放送される授賞式にはハプニングがつきものですが、前代未聞のハプニングといえば主演男優賞にノミネートされていたウィル・スミスによるビンタ事件が真っ先に思い浮かびます。妻の容姿をジョークのネタにされたことに激高したスミスが、壇上に乱入してプレゼンテーターを務めたクリス・ロックを平手打ちした事件は世界中に衝撃を与えました。

また、2017年には作品賞の発表で、本来の受賞作である「ムーンライト」ではなく、有力候補だった「ラ・ラ・ランド」が呼ばれるという珍事も起きています。プレゼンテーターを務めた俳優ウォーレン・ベイティに渡された封筒の中には、主演女優賞のエマ・ストーンの名と共に作品名として「ラ・ラ・ランド」が書かれており、それを読み上げてしまったというものでした。

【千歳香奈子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「ハリウッド直送便」)