3月、無観客で「創作300作目」を披露した桂文枝
3月、無観客で「創作300作目」を披露した桂文枝

創作300作を遂げた桂文枝(76)は、入門1年もたたず売れっ子に。半世紀以上も舞台、テレビで活躍してきた。そこへ突然訪れた「毎日が日曜日」。戸惑うことなく「社会人のお勉強」を始めた。

創作への原点は、父親がいなかった子ども時代のひとり遊び。天賦の才を生かした日常の楽しみ方は、退職後のセカンド・ライフに悩む世代へのメッセージでもある。【取材・村上久美子】

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3月4日、私がずっと創り続けてきた創作落語の300作達成記念落語会が新型コロナ感染拡大防止のために中止となりました。

僕が吉本に入って54年目にして初めての出来事でした。せっかくその日に向けて稽古してきたのに-と、ガックリしていたら、無観客での配信をしませんかと提案されまして、これまた生まれて初めて誰もいない客席に向かって落語を演じたのです。それ以来、今日までほぼ決まっている仕事はなくなり、テレビの仕事もなくなりました。

3月、無観客で「創作300作目」を披露した桂文枝
3月、無観客で「創作300作目」を披露した桂文枝

この世界に入って10カ月ほどですぐに売れて、休みなく働いてきましたが、突然「毎日が日曜日」になってしまったのです。ところが、この休みで僕は社会人としてのお勉強を始めました。初めて洗濯機を使い、電子レンジを使い、炊飯器や、ガスレンジ、今まで誰でもできることが何もできなかったのですが使えるようになったのです。

いつ独居老人になっても大丈夫のように、創るのは落語だけじゃなく、料理、しばらく忙しくてやってなかったウクレレに、絵をかいたり、もちろん本業の方も今までの作品をまとめようと本にするために原稿を書いたり。

毎日家の中で全く時間を決めずに、気が向いたらこれをするという感じで、食事を考えるのも楽しくて、子供の頃からそうですが、この環境を楽しもうと思えば、いくらでも面白いことが思いつくし、飽きれば他のことをするようにすれば、あっという間に日が暮れて、そのように一日が充実して送られれば、今度舞台の、またテレビでの仕事を再開できた時、以前より楽しく出来そうに思えて、とにかく、毎日が楽しくて仕方がありません。

長く続けないで、飽きたら他のことをやってみる。知らなかったけど、冷凍食品とかにいろんなものがあるんですね。もちろん太らないように運動もやっています。無理にしないで気の向くままにやってみましょう。(原文まま)

◆桂文枝(かつら・ぶんし)本名・河村静也。1943年(昭18)7月16日、大阪府生まれ。66年、桂小文枝(5代目文枝)に入門。67年、MBSラジオ「ヤングタウン」レギュラー。「ヤングおー!おー!」「パンチDEデート」などテレビでも活躍。03年、上方落語協会6代目会長に就き、歴代最長8期15年。06年に天満天神繁昌亭を開館など貢献。12年、6代文枝を襲名。15年には「新婚さんいらっしゃい!」で「同一司会者によるトーク番組の最長放送」としてギネス世界記録認定。文化庁芸術祭大賞は複数、紫綬褒章(06年)と受賞、受章も多数。

3月、無観客で「創作300作目」を披露した桂文枝
3月、無観客で「創作300作目」を披露した桂文枝