令和となり、演歌・歌謡曲の世界で「第7世代」と呼ばれる若手歌手が台頭しています。ニッカンスポーツ・コムでは「われら第7世代!~演歌・歌謡曲のニューパワー~」と題し、ベテラン音楽担当の笹森文彦記者が、気鋭の歌手を紹介していきます。トップバッターは令和初日の19年5月1日にデビューした新浜レオン(25)。B'z、ZARD、大黒摩季、倉木麻衣らが所属する「ビーイング」の演歌・歌謡曲系第1号歌手として、新風を巻き起こしています。3回にわたって紹介する第1回は「新浜レオンの魅力」です。


アジサイが咲き誇る中、笑顔を見せる新浜レオン
アジサイが咲き誇る中、笑顔を見せる新浜レオン

新浜レオンの「レオン」は、ラテン語で「ライオン(獅子)」、ゲルマン語では「雷」を意味する。発音はとても軟らかな響きで、欧米では男の子の名前によく使われるが、実は強さを象徴する意味を含んでいる。

礼儀正しくて、少年のようなキラキラとしたまなざしと笑顔がとてもさわやかだが、心に秘めた歌手としての決意は揺るぎない。まさに、名は体を表すがぴったりの芸名である。歌謡界大全盛時の野口五郎や西城秀樹らをほうふつとさせる伸びやかな歌声が魅力で、演歌・歌謡曲の「第7世代」の代表格だ。

 新浜 令和元年5月1日にデビューして、令和を代表する歌い手に、を目標に掲げています。第7世代に名前を挙げていただくことはとても光栄です。名前を挙げていただいている以上、他の歌手の方と一緒に、若い世代でしか、今の時期でしか届けられない活動を意識してやって行きたいと思います。

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デビュー曲「離さない 離さない」(通常盤)のジャケット
デビュー曲「離さない 離さない」(通常盤)のジャケット

「ビーイング」の初の演歌・歌謡曲系歌手として「離さない 離さない」(作詞・渡辺なつみ、作曲・大谷明裕、編曲・矢野立美)でデビューした。運命の人との情熱的な愛を歌い、第61回日本レコード大賞新人賞などを獲得した。

新型コロナウイルス感染症のため、1年2カ月ぶりのCD発売となった第2弾「君を求めて」(作詞セリザワケイコ、作曲編曲・馬飼野康二)では、狂おしいほどのいちずな愛を歌った。そして今年5月12日に発表した両A面の最新曲「ダメ ダメ…/さよならを決めたのなら」では、恋愛の明暗をアップテンポとバラードで表現した。

 新浜 新人賞をいただけるなど、さあ、これからという時にコロナの状況になってしまって。最初は正直、真っ白になったというか。でも止まってしまった時間を無駄にせず、出来ることを頑張ろうと思いました。歌っている作品は恋愛の曲ですが、スタッフの皆さんと一緒に「希望」を大切にしたいと考えました。応援してくださる方に(コロナ禍の)この時期だからこそ「希望」を強めて伝えたいと話しました。


「君を求めて」(通常盤A)のジャケット
「君を求めて」(通常盤A)のジャケット

「ダメ ダメ…」(作詞・山崎あおい、作曲・馬飼野康二、鎌田俊哉、編曲・船山基紀)は否定的な「ダメ」ではなく、人を愛する心は、大人の既成概念や詭弁(きべん)に従うことなんてできないという「ダメ」である。愛を純粋に切り開こうとする歌だ。

両A面の「さよならを決めたのなら」(作詞・渡辺なつみ、作曲・大谷明裕、編曲CHOKKAKU)は切ないバラード。デビュー3年目の成長を見せたいというスタッフの強い思いがあったという。

 新浜 バラードのA面は初めてです。僕の中では、(3作目は)3年目という節目の集大成と言いますか、3部作の完結というイメージがすごくあります。

「ダメ ダメ…」には心情を表す振り付けがあり、「さよならを決めたのなら」では切実な表現力が求められた。そのため、コロナ禍でのホームステイをうまく利用し、韓国の話題作「愛の不時着」の一気見など、恋愛のドラマや映画を数多く見て、表現の勉強をしたという。

 新浜 (恋愛を)経験しているとか、していないは置いておいて、歌というのは演じることも大事。自分なりに、そういう世界を想像の中でつくり上げることを勉強しました。


「ダメ ダメ…/さよならを決めたのなら」(通常盤A)のジャケット
「ダメ ダメ…/さよならを決めたのなら」(通常盤A)のジャケット

新浜の歌手としての使命は、令和を代表する歌手になることだけでなく、演歌・歌謡曲の名曲を歌い継いでいくことである。その実践として、これまで発表した3作品(通常盤A、Bなど各盤)に、そうした名曲の数々をカップリングとして入れている。デビュー曲には「青春時代」(森田公一とトップギャラン)「見上げてごらん夜の星を」(坂本九)「また逢う日まで」(尾崎紀世彦)。第2弾には「私鉄沿線」(野口五郎)「上を向いて歩こう」(坂本九)。そして最新作には「メモリーグラス」(堀江淳)「時の過ぎゆくままに」(沢田研二)。

 新浜 スタッフのみなさんと相談しながら決めています。僕にとって、もちろん演歌・歌謡曲を、同世代を含め幅広い年代の方々に届けたいというのが1番のテーマです。そのためには、ポップスなどジャンルにとらわれない歌を歌うことも、若い人に聴いてもらうきっかけになると思っています。ジャンルにとらわれずに挑戦する気持ちは、大切にしています。


洋楽を初披露した新浜レオン(左)。左はギタリスト増崎孝司(東京・南青山のブルーノート東京)
洋楽を初披露した新浜レオン(左)。左はギタリスト増崎孝司(東京・南青山のブルーノート東京)

その挑戦を、つい最近も行った。6月24、25日に東京・南青山のブルーノート東京で開催された人気ライブ「the Lounge」に、ゲストボーカリストとして出演したのだ。名フュージョンバンドDIMENSIONのギタリスト増崎孝司がホストを務める伝説的なライブである。増崎が同じ「ビーイング」所属だからと言って、簡単に立てるライブでも会場でもない。増崎は新浜にオファーした理由を「いろんなことにチャレンジしたいという意欲を感じさせる」と語っている。新浜は増崎が特別にセレクトした「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」「Stand by Me」、「上を向いて歩こう」の英語バージョンの3曲を、2日間に分けて披露した。新浜はステージで「今回の洋楽を歌うのは人生初で、自分自身新たな扉を開けた気がしています。このような貴重な機会をいただけたことに、心から感謝しています」と熱く語った。

新浜レオンは成長し、進化し続けている。第2回は、そんな新浜レオンの「誕生の原点」に迫る。

◆新浜(にいはま)レオン 1996年(平8)5月11日、千葉県白井市生まれ。父は演歌歌手、母は料理の先生。野球少年で、小学校の卒業文集に書いた夢は「プロ野球選手」。千葉英和高3年の時は捕手で主将。夏の県大会の最高成績は2年のベスト4。大東文化大国際関係学部に進学。同大の「ミスターコンテスト」でグランプリを獲得。19年5月1日に「離さない 離さない」でデビュー。同年末の第61回日本レコード大賞新人賞、20年2月発表の第34回日本ゴールドディスク大賞ではベスト・演歌/歌謡曲・ニュー・アーティストを受賞。座右の銘は「真実一路」。趣味は釣り。血液型AB。


◆第7世代 もともとは若手芸人が提起したお笑い世代の区分で、第1世代のコント55号、ザ・ドリフターズから7世代に分けた。これを演歌を中心に戦後歌謡界に当てはめたのが演歌・歌謡曲版。第1世代は三橋美智也、春日八郎、三波春夫ら。第2世代は美空ひばり、島倉千代子、江利チエミら。第3世代が北島三郎、五木ひろし、森進一、千昌夫、都はるみ、水前寺清子、大月みやこら。第4世代が八代亜紀、石川さゆり、坂本冬美、藤あや子、細川たかし、吉幾三ら。第5世代が水森かおり、氷川きよしら。第6世代が山内恵介、三山ひろし、竹島宏、純烈、市川由紀乃、丘みどりら。お笑いでは「3・5世代」「4・5世代」などさらに細かく分類している場合もあるが、歌謡界では7世代が一般的。


◆笹森文彦(ささもり・ふみひこ)北海道・札幌市生まれ。早大第1文学部心理学科卒。1983年入社。文化社会部で長年音楽記者。初代ジャニーズ事務所担当。演歌・歌謡曲やアイドルだけでなく、井上陽水、矢沢永吉、松山千春、長渕剛、アリス、中島みゆきら数多くのミュージシャンをインタビュー。93年から日本レコード大賞審査員を務め、16年は審査委員長。テレビ朝日系「ワイド!スクランブル」「スーパーモーニング」、東日本放送などテレビ朝日系東北6県番組「るくなす」、福岡放送「めんたいワイド」などにコメンテーターとして出演。座右の銘は「鶏口牛後」。血液型A。