9月30日に72歳で亡くなった三遊亭円楽さんが襲名に執念を燃やした「三遊亭円生」襲名問題が少し進展しそうです。前々回のコラムで、円楽さんが亡くなったことで「円生」の復活はしばらくなくなったと書きましたが、先日、国立演芸場で行われた五代目円楽一門会による円楽さんを「しのぶ会」で三遊亭好楽(76)が「一門会が必ず円生も円楽も誰かに継がせます。このままだと名前が死んでしまう。後輩に受け継がせるのが私たちの役目」と明言したのです。何とも心強い言葉です。

昭和の名人6代目円生さんが1979年に亡くなり、その後空席状態が40年以上も続いています。08年に5代目円楽さんが三遊亭鳳楽(75)に「7代目円生」を襲名させると宣言したものの、5代目が亡くなった後に円生さん直弟子の三遊亭円丈さん、三遊亭円窓さんが名乗りを上げ、三つ巴の争いの末、3人ともに襲名争いから離脱しました。

そして、70歳になった円楽さんが「円生」襲名に手を挙げました。大名跡「円生」が落語界にいないのはもったいない、復活することで落語界を盛り上げたいという思いからでした。円楽さんは人気・実力、そして落語祭を長年プロデュースすることで所属協会を越えた多彩な人脈があり、病に倒れることがなかったら、円楽さんの「7代目円生」は現実のものになっていたでしょう。

そんな円楽さんの熱い思いを知る好楽だからこそ、「誰かに継がせる」という発言は重いものがあります。一門会には三遊亭兼好(52)三遊亭王楽(44)三遊亭萬橘(43)など実力のある中堅がおり、若手でも有望株が何人もいます。ただ、「円生」ほどの大名跡の襲名となれば、一門会の一存で決められないでしょう。幅広い賛同が求められるし、政治的な駆け引きが必要な場面もあるかもしれません。一門会としての覚悟が試されるでしょう。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)