歌舞伎俳優を主人公にした映画「国宝」の大ヒットもあって、歌舞伎公演の観客も増えています。1月も歌舞伎座、若手中心の浅草歌舞伎、市川團十郎が座頭の新橋演舞場、菊五郎劇団の新国立劇場で観劇しましたが、中でも新国立劇場は1階席だけでなく、2階席も後方席まで観客で埋まっている光景には驚きました。
国立劇場が2023年に老朽化のため閉場したため、新国立劇場に場所を移して24年、25年と正月公演を行っていますが、両年ともに集客に苦戦して、空席が目立っていました。今年は、女忠臣蔵とも呼ばれる「鏡山旧錦絵」の17年ぶりの通し上演で、お初に8代目菊五郎、尾上に中村時蔵、頼朝役で7代目菊五郎が出演。舞台の評判も良く、客の入りは好調でした。
今、歌舞伎界には追い風が吹いているけれど、歌舞伎座とともに歌舞伎公演の柱となるべき国立劇場をめぐる状況は厳しいものがあります。当初は29年に再開場の予定でしたが、2度の入札が不調に終わり、再整備計画を見直しました。昨年9月には、3度目の入札公告を今年3月ごろに行い、再開場は33年という見通しを発表しましたが、その後に建設工事の遅れも考慮して、再開場時期は36年になる可能性もあると修正しました。
人間国宝の歌舞伎俳優の片岡仁左衛門、京舞の井上八千代らが早期の再開場を求めて会見や陳情を度々行ってきましたが、その声も空しく閉場から再開場まで13年もかかりそうな事態になっています。建設工事が始まる時期が遅れれば遅れるほど、建設費用も高騰していく悪循環。10年後に再開場した国立劇場で歌舞伎を見ることができるのか。入札の行方に注目したいと思います。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)





