うつろな表情、絶妙なやさぐれ感…広瀬すずの代表作になると思う。
詩人の中原中也と評論家の小林秀雄。ともに文学史に名を刻む2人が、奔放に生きた女優長谷川泰子をはさんで感情をむき出す。史実に基づいたストーリーがまず興味深い。
純情一途の中也を演じる木戸大聖は遠くを見るような目が印象的だ。小林役の岡田将生は対照的な打算を巧みににじませている。
親友だった2人は泰子を巡る憎愛で心を削るが、そこから詩が生まれ、生活費のための評論懸賞に筆が進む。根岸吉太郎監督が、田中陽造脚本の構成の妙を生かし、アートを生み出す「メカニズム」が手に取るように伝わってくる。
大正時代のおしゃれな背景も見どころで、墨色の京都の街に中也の赤い番傘がパッと映える冒頭のシーンでいきなり引き込まれる。コートや着物の粋な着こなしも、泰子が2人を引きつける説得力になっている。
記憶に残るのは、三角関係に疲れ、公園のベンチにたたずむ泰子の表情。ハッとするほど美しい。
しっとりとした情愛を描いてきた根岸監督が、終始乾いたタッチで描ききり、作品を特徴付けている。【相原斎】
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