終戦から80年。戦争を語り継ぐ人が少なくなっていく中で、戦争の記憶と当時の人々の思いを、今に生きる私たちにつないでくれる作品だ。ほぼ無傷で第2次大戦の終戦を迎えた唯一の駆逐艦「雪風」を通し、時代を懸命に生き抜いた人々の姿を描く。
小型で機動力に優れ、戦闘や艦隊護衛、物資の輸送、沈没艦船の乗員救助など多彩な任務を担った雪風はどんな過酷な戦場でも、海に投げだされた多くの仲間たちを救い、必ずともに戻ってくることから「幸運艦」と呼ばれた。
豪華な俳優陣が集結した。雪風の艦長・寺澤を演じる竹野内豊は作戦遂行の重責にも常に冷静沈着だ。わずかな感情の揺れを表情や息づかいで表現している。200人以上の下士官と兵を束ねる先任伍長・早瀬役の玉木宏は情にあふれる兄貴分を熱演。竹野内は言う。「作品全体に武士道が描かれているなと感じた。どんなことがあろうとも勇敢に戦う軍人を美徳とせず、必ず生きて帰る、生きて“還す”、命をつなげていく。そこに物語の最大のテーマがある」。人間ドラマの深みに少し物足りなさはあるが、何げない日常がどれほど大切なのかをあらためて感じた。【松浦隆司】
(このコラムの更新は毎週日曜日です)




