フジテレビの倉田大誠アナウンサー(39)が、今年4月から同局系の情報番組「めざまし8」(月~金曜午前8時)の情報キャスターを務めている。04年に入社以来、情報番組、バラエティー、ニュースをバランス良くこなすプロフェッショナル。今夏の東京オリンピック(五輪)では、スケートボード西矢椛(もみじ)選手の金メダルの実況中継で「13歳、真夏の大冒険!」の名言を残し、「ユーキャン新語・流行語大賞」の候補にも選ばれたイケメンアナの素顔に迫った。

★氷河期就職

今年4月から、月曜から金曜まで2時間の生放送を担当している。

「午前4時すぎには出社しています。若い時と違って、それがあまり大変じゃない(笑い)。最初は眠るのに苦労をしました。それで夜は腸活を心掛けています。布団に入る1時間半前にお風呂に入り、2時間以上前に食事をとるということを、夏から始めました」

番組では話題のニュースを取り上げ、まとめて伝えている。

「生放送の2時間は結構、あっという間に過ぎて行くんです。そのため、オンエアの時よりも、それ以外で、自分なりのいろいろな英知をどう養うかということが重要になってきます」

メインキャスターの谷原章介とは、この番組で初共演。

「いい方ですね。いろいろなことに興味のある方で、忙しいのにさまざまなことを調べていて、知識も豊富。努力家で、スタジオトークなども圧倒的な知識量で展開していただいています。コロナ禍でなければ、この半年間で食事やプライベートでもご一緒できたかもしれないのですが。オンエア前に会って、オンエアが終わったらさようならの繰り返し。これから状況が許せば、ですね」

谷原とコンビを組む後輩永島優美アナウンサー(29)にも温かい目を向ける。

「彼女はオンエアが終わった後に、自分の知識が不足しているところを勉強し直している。新聞を読んだり、文献を調べたり。1人で向き合っている姿を、よく目にします。当たり前のことですが、すごいと思います」

04年、フジテレビに入社。日大芸術学部放送学科在学中はドラマを作ることを夢見ていた。

「ドラマ制作の専攻をしていたんです。でも04年は就職氷河期真っただ中。テレビ局なんて無理と言われてたのですが、アナウンサー試験の時期が早いから受けてみたら合格。正直、アナウンサーは目指していなかったので驚きました」

人気職業に受かってしまった。

「苦労しました。やりたいことが具体的になかったんですよね。こうなりたい、ああなりたいがなかった。スポーツ嫌いではなかったけれど、スポーツの実況なんて自分にはとても無理だろうって思っていました。といって、報道に関われるほどの社会学、経済学の知識があるわけでもない。バラエティーはやってみたら、それこそ本当に大変。だから自分がどれをやりたいのか、今でも分からないぐらい。入社して、悩む日々が続きました」

それでもキャリアを積み、今年の7、8月に開催された東京五輪、パラリンピックの実況を担当した。コロナ禍で1年延期された。

「直前まで開催されるのか分からなかったので、手放しで喜べない気持ちも強かったです。しかし、アスリートの方々が悪いわけではない。彼らの見ているところは競技一点しかない。だから、そこを割り切って伝えなくてはいけないと。気持ちの整理には時間がかかりました」

★「ゴン攻め」

東京五輪では、初めて競技として採用されたスケートボードの実況中継を担当した。

「自分にとっても初めての五輪、そして初めてのスケートボード競技。実況が決まった今年3月までは、スケートボード競技を見たことはなかった。遊んでいる人を見たことはあっても、競技として実況するとなると全く違いました」

お手本など何もない、競技スケートボードの実況中継。解説の、日本人で初めてワールドカップ優勝を果たしたプロスケートボーダーの瀬尻稜氏(24)と工夫した。

「ひな型を作るのが、難しかったです。ある意味ゼロから作れるので、やりたいようにはできるのかもしれないけれど。1回、瀬尻さんに話し方について聞かれて『どうすか』より『どうですか』の方がいいかもしれないですねって言ってみました。でも、スタッフの方の『あれが瀬尻のしゃべり方なんで』という話を聞き、そのままでいこうと」

狙いはハマり、飾らない若者言葉で「ゴン攻め」「鬼やばいっすね~」「ビッタビタにはめてましたね~」で解説した瀬尻氏と、それを受けながら真面目で丁寧に実況する倉田アナのコンビが話題を呼んだ。

「もう、やっちゃえっていう感じ(笑い)。ただ、瀬尻さんに何度か会社(フジテレビ)に来ていただいて、動画を見ながら相当練習しました。自分でも気になる技の動画を見つけては送って『この技は何て言うんですか』と質問して、返信してもらったり。そういうことの積み重ね」

その積み重ねから、西矢選手の金メダルの実況中継で「13歳、真夏の大冒険!」の名言が生まれた。瀬尻氏の「ゴン攻め」「ビッタビタ」とともに流行語大賞にノミネートされた。

「試合前日のお昼に空を見て思いついた言葉です。『13歳、真夏の大冒険』という言葉を言おうとしたわけではなくて『真夏の大冒険が始まります』のように、西矢選手がスタートする時に使おうと思っていたんです。けれども、使う機会が全くなくてスルーしてしまっていた。それが、最後に出ただけなんです」

39歳、イケメンの独身。

「なぜでしょうかね(笑い)。そんなに結婚は意識はしていないです。でも、家族や子供に向き合ったニュースを伝える時に、そこを知らないのは残念だと感じることはありかな。経験から紡げる言葉もあると思いますので」

来年3月に40歳。「四十にして惑わず」だ。

「ポイントを絞って、何かを突き詰めてみたいとは思います。これというものを武器にできたらいいなと思います。まだ、見つけられてないので、見つけてみたいですね」

タレント風のアナウンサーも出てくる中で、しっかりとした会社員。毎朝、誠実さを伝えてくれる。【小谷野俊哉】

▼「めざまし8」のメインキャスター谷原章介(49)

不器用な面もあるのだなと驚きました。それはバカがつくほど真面目で、誠実な性格がゆえなのかもしれません。放送のための準備をノートにびっしりと書きため、コメンテーターや僕からどんな質問が来ても答えられるように備える。時に備えすぎて空回りするほど。こんなに人間的に愛嬌(あいきょう)のある方だと思っていませんでした。次はぜひ、瀬尻さんのビッタビタのゴン攻めで、スケボーのトレーニングをしていただきたいですね(笑い)。結婚は、人それぞれ。ご本人の望む方向になることを祈っております。

◆倉田大誠(くらた・たいせい)

1982年(昭57)3月4日、長野市生まれ。日大芸術学部放送学科を卒業後、04年にフジテレビ入社。「めざましテレビ」「FNNスーパーニュース」「笑っていいとも!」「ノンストップ!」などを経て、14年「めざましテレビアクア」、19年「直撃LIVE グッディ!」のメインキャスター。現在は「めざまし8」、「みんなのKEIBA」や各種スポーツの実況など。趣味・特技はソフトテニス、ブレイクダンス。血液型A。

◆フジテレビ系「めざまし8」

月~金曜午前8時~9時50分の情報番組。コンセプトは「大人のめざまし」。俳優谷原章介と永島優美アナウンサーがメインキャスター。気象予報士の天達武史が気象防災キャスター。倉田アナは月~金曜の情報キャスターを務める。

(2021年11月7日本紙掲載)