「最速最強」の二つ名で知られる日本を代表する麻雀プロ、多井隆晴(おおい・たかはる=51)が、「麻雀は“運ゲー”じゃない」という言葉を実力で証明している。18日から開幕する「Mリーグ2023-2024シーズン」で「渋谷ABEMAS」の一員として史上初の2連覇に挑む。業界のトップとしての矜持(きょうじ)と展望を明かした。【横山慧】

★初代MVP

麻雀プロリーグ「Mリーグ」は6年目のシーズンを迎える。昨季悲願の初優勝を果たした渋谷ABEMASだが、多井はいたって冷静。「優勝してわーっと喜んだんですけど、それをかみしめるのも数日くらいで、いつもの仕事に戻っちゃいました」と振り返った。

リーグ初代MVP(レギュラーシーズン個人1位)で、5季トータルのレギュラーシーズン成績もただ1人1000ポイント超え(1072・7)で全選手中1位。チームとしてもABEMASはリーグで唯一5季連続ファイナル進出中。常々「麻雀は“運ゲー”じゃない」と発言しており、有言実行している。

「もちろん運の要素もありますよ。結構あります。(運と実力)半々くらいじゃないですか。昨季は僕も(レギュラーシーズン個人成績)マイナスでしたし」としつつ、「よく『誰が一番強い?』って話があるんですけど、やっぱり一番勝ってる人が一番強いと思うんですよ。子どもたちにもそう教えたほうがいいと思います」と言い切った。

麻雀に関する多井の言葉には、一切よどみがない。実績と自負が裏付けとしてあるからだろう。もちろんMリーグだけで勝っているわけではない。95年のプロ入り以来、あらゆる大会で結果を残し続けている。

「麻雀だから、理不尽だと思う時はたくさんありますよ。でも『自分が正しいから、この後数万回やったら絶対自分が勝つはずなんだ』って思ったらおしまいなんですよ。敗因を探すことが大事で。どんなについてなくても、なんかやれることがあるはず。周りも自分も、まだ未熟なんで」

★年収5000万!?

第一打から“オリ”に向かう「配牌オリ」など、守備力の高さも特長の1つだ。「世の中アガりに関しては情報が出回っているんですけど、守備に関してはほとんどない。ここ最近やっと話題になってきた守備の話も、僕は20代の頃からやっていました。みんなが『何切る』をしている間にずっと守備の練習をしてきたんです」と説明。「『配牌オリ』は20年後、小学生が当たり前のようにやっていると思いますよ。そうなってほしい」と願った。

トッププロとしての発信力も際立つ。公式YouTubeチャンネル「たかちゃんねる」(登録者数25・6万人)の生配信も人気だ。「麻雀プロで食べていくって夢がないと、業界が伸びていかないですから」と力を込めた。「言葉は悪いですけど、麻雀プロの評価ってずっと低かったと思うんです。各界の方とお仕事する時、控室もお弁当も、メークも椅子もないことが何回もあった。それは業界の責任であり、僕の責任なんです」と言い切った。

当時から比べて年収は10倍以上になり、現在は大体4、5000万円。あえてブランドの服やバッグを身に着けることも多い。「トップの最低限の礼儀というか。『この業界そんなに捨てたもんじゃないよ』っていうのを示さなきゃいけない」と自負を明かした。

今季は初めてディフェンディングチャンピオンとしてMリーグに臨む。「麻雀を知らない方や、初心者の方にも、麻雀は1つの方法じゃなくていいんだよ、っていうことを見ていただきたい」と伝えた。「選手36人が全員違う麻雀を打つので。個性と個性のぶつかり合い。その中で、僕がどれだけ考えて打って、読み間違えたらメモして、次また打って『やっぱりな』みたいな…それの繰り返しです」と話した。

ABEMASのチームメート、白鳥翔(37)松本吉弘(31)日向藍子(34)の成長も感じている。「まずは2連覇ですね。もし僕が抜けても優勝候補筆頭、って言われるチームに早くなってほしいです」と期待を明かした。一方で「ABEMASって恵まれているので仕事もあるし、年収とかも上がっていると思う。そういうところでダメになる人、すごい見てきたんで。私生活とか、いろんな意味で誘惑に気を付けてほしいですね。Mリーグ全体に言えることですけど」と年長者らしくくぎも刺した。

★「麻雀星人」

自身のプライベートは。「一切ないです。ゼロ。だから僕は大丈夫。空いてる時間、全部仕事してるんで」とキッパリ。「朝の3時まで生配信して、2~3時間麻雀の勉強なり検索なりして、6時に寝たら7時か8時には起きなきゃいけないんで。ずっとそんな感じです」と、「麻雀星人」の異名にたがわぬ生活ぶりだ。

「USJとか、行ったことがないんですよ。そういう青春を味わってない。ディズニーシーとか行ってみたいですよね」と苦笑い。独身を貫いており、ファンからは「仕事で共演したアイドルと付き合っちゃえ!」などのコメントを受ける時もあるが…。「そういうことして、『麻雀プロがナンパしてきた』みたいな話が出たら、また麻雀プロの評判下げちゃうんで。そういうマイナスになることをしたくない。トップはそれぐらい気をつけないとダメですよ」と超ストイックだ。

「本音は静かに暮らしたいですよ。この業界に僕がいなくてもいいや、って思えたら、麻雀プロ生活をきれいに終えたいですね。麻雀を好きなまま、カッコよく終わりたい。『青いまま枯れたい』んですよ。そしたら、釣りでもしようかな。料理でも覚えようかな。1年くらい何もせず暮らして、海で貝殻でも集めたいです。ずっと突っ走って来ちゃったんで」

生活の全てをささげて「麻雀は“運ゲー”じゃない」を実証してきた。あらためて言葉の真意を聞いた。

「人生と一緒なんですよ。理不尽から始まるじゃないですか。『あの人は親が大金持ちでいいな』『うらやましいな』とか。麻雀もそうですよ。配牌とって、いい人と悪い人がいて。でも、技術でなんとかなることもあって。それが楽しいんで。全部思うようにいったらつまんないですよ。人生も麻雀も。負けるから楽しい。麻雀は絶対負けますから。7割くらい負ける。それが面白いんですよ」

まさに多井の麻雀が、そして人生が、今季も多くのファンを魅了する。

▼長年のライバルで盟友の麻雀プロ、TEAM RAIDEN/雷電所属の瀬戸熊直樹(53)

「極める人」。興味をもったことに対して勉強・時間・お金を惜しまず、目標を高い所に定め、そこまでの道のりを楽しむかのように努力を続ける人です。結果を出すごとに次の目標を定めるので終わりなき旅ですが、その度の結果の積み重ねが、「極め」につながるのだろうなと思います。皆さまには是非、彼の麻雀解説を聞いてほしいです。ジョークや余談を交えながらいろんなヒントをぶっ込んでくれます。「へえ」より「何で?」と、疑問を与えることで学びたくなり、それにより知識がふえて自分なりの選択を楽しめるようにしてくれます。唯一の弱点は「恋愛」ですが…ご内聞にお願いします。

◆多井隆晴(おおい・たかはる)

1972年(昭47)3月17日生まれ、東京都葛飾区出身。5歳で麻雀を覚え、10歳の頃にはほぼ「牌効率」をマスターしていたという。95年に日本プロ麻雀連盟のテストに合格し、プロ入り。06年の同連盟退会後、RMU(リアル・マージャン・ユニット)の創設に関わり、07年から同団体代表に就任した。20年にプロアマ問わないオープントーナメント「麻雀最強戦」優勝。169センチ。血液型B。

◆Mリーグ

18年に7チームで開幕。今季から9チームに。俳優萩原聖人(52)やタレント岡田紗佳(29)、元乃木坂46中田花奈(29)も選手として所属。レギュラー、セミファイナル、ファイナルシリーズと順に戦い、優勝チームの賞金は5000万円。