次世代を担う若手スター、花組の柚香光(ゆずか・れい)は、27日から東京宝塚劇場の「新源氏物語」で、女役と男役の2役をこなし、12月10日の新人公演では主役の光源氏に臨む。新公主演は3度目。新人最終7年目に得た“3役”で、さらなる飛躍を期す。12月27日まで。

 りりしく、スラリとした立ち姿で、早くから将来を嘱望されてきた。期待の表れが“3役”の難題だ。

 「(女役は)配役を聞いて、まさか…と衝撃。あぜん。(男装の麗人の)オスカルはありますが、芝居で女役のセリフを話すのは初めて。最初は、手も足も出ないと思いました」

 光源氏を思うゆえ、生き霊となってしまう六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)、禁断の恋へ踏み出す頭中将の息子、柏木の2役に名前があった。しかも、新人公演では主役だ。

 「今この学年で、学べるだけ学びなさいって、言ってくださっている気がします。この公演で、燃え尽きてもいいんじゃないかって思っています」

 本公演で柏木、新人公演で主役といえば、史上最速トップの天海祐希と同じ。「こんなに光栄なことはないです。心して挑みます」と、表情を引き締めた。

 女役の六条には源氏とのからみ、その愛の強さから生き霊となる見せ場もある。「六条は知識も教養もあり、自制し過ぎたがため、生き霊になった」ととらえ、高貴な女性を表現する。

 平安作品だけに、衣装は十二単(ひとえ)。前作の台湾公演「ベルサイユのばら」でオスカルを演じたが、女性でもまったく違う。

 「今回は、日本物の中でも江戸時代ではなく平安で、女役。十二単で長ばかま。信じられない量の“分からないこと”が発生しておりました(笑い)」

 一方の柏木は、望んでいた役だった。

 「(六条と)切り替えは難しいですが、柏木はうれしかった。だって、若気の至り! 分かりやすいですもん。友達が止めても(恋を)我慢できないから」

 気持ちを抑え込む六条から、感情を爆発させる柏木へ。開放感を楽しむ。

 「女役から男役に戻ったとき、あ~、戻った! って。エネルギーに変えて。女らしく、ピンクのけいこ着で(六条の)けいこに出たら、恥ずかしくてワナワナしてました(笑い)」

 新人公演の源氏役は、本公演主演のトップ明日海りおの演技を日々、勉強。明日海は月組時代、平安作品の経験があり、源氏の孫を演じたこともある。

 「ほんとに神々しい。やはり、平安物を経験されているので所作、目線の使い方、話し方、すべてが全然違う」。そして、他組の同期からは刺激を受ける。

 星組で主要な役割を担う男役、礼真琴は、本拠地の直近前作「ガイズ&ドールズ」で、主要キャストの恋人女性を好演した。「私も! って思います。礼の舞台も見て(堂々と演じる姿が)うれしかった。男役が女を演じる不安が分かるから」。柚香も「期待の若手」から「堂々たる主力」へ進む。【村上久美子】

 ☆柚香光(ゆずか・れい)3月5日、東京都生まれ。09年4月「Amour それは…」で初舞台。花組配属。14年2月「ラスト・タイクーン」で新人公演初主演。同年6月「ノクターン」でバウ初主演。今年1月、専科だった北翔海莉主演の和物「風の次郎吉」に出演。8月の台湾公演ではオスカル役。身長171センチ。愛称「れい」。