新生雪組の人気スター彩風咲奈(あやかぜ・さきな)が、レット・バトラーをイメージした「孤高の船長」を演じ、外部劇場に初主演している。「『CAPTAIN NEMO』…ネモ船長と神秘の島…」は、既に東京・日本青年館ホールでの公演を4日に終え、大阪公演(シアター・ドラマシティで16~24日)の開幕を待つばかりだ。

 新トップ望海風斗(のぞみ・ふうと)率いる新生雪組。彩風は、望海とは別班を率いて静かに燃える。

 「前(トップ)のちぎさん(早霧せいな)たちがつなげてくださった勢いを、新しい時代の始まりに途絶えさせてはいけない。身の引き締まる思いです」

 外部劇場で初めてセンターに立った。今回はSFの名作「海底二万里(マイル)」が原作。南大西洋の神秘の島を守ろうとする、潜水艦「ノーチラス号」のネモ船長を熱演している。

 「ディズニー・シーのアトラクション(センター・オブ・ジ・アース)でしか知らなかった」と言い、映画などを参考に世界観を勉強。演出の谷正純氏からは「レット・バトラーのような雰囲気で。今まで(の彩風)にない魅力を引き出したい」と言われた。

 「衣装も重厚で、寡黙で、孤高の美学みたいな。多くは語らずとも、そこに立っているだけで表現を…」

 足長スタイル、優しい笑顔が魅力だけに新境地への挑戦。自身にリンクする。

 「今回の出演者はほぼ下級生。稽古場で、お、頑張っているな! と思ったり(笑い)。ネモ船長もそういう思いだったのかな」

 リーダーとしての立ち居振る舞いを考えるようになった。前トップ早霧の背を追い、魅力を学んできた。

 「(早霧の魅力は)ウソがない、と。私たち後輩にも、お客様にも、芝居へも。ちぎさんが、すべてをさらけ出し、真実(の舞台)を作り上げていかれたので、私たちも一点の曇りもなく、ついていけた」

 稽古場では、役作りに悩む姿もさらけ出した姿勢に感銘を受けた。そして、早霧を2番手として支えた望海のあり方にも、だ。

 「望海さんが120%の力を出して輝くことで、ちぎさんが安心されていた。私も、望海さんがちぎさんにされていたように、陰で支えるのではなく、ドンと自分が輝いて、大きくエネルギーを発していきたい」

 前作で初の休演も経験。苦い思いを糧に、自己管理を徹底させる。男役10年を迎えるまで、稽古は「身を削ってやることこそ、上達への道」と考えていた。

 「食事はちゃんととるように! ははは(笑い)。いや、のめり込んでしまっても日々、空を眺め、きれいだなと感じる心を忘れないようにしたり。1週間を考えて、今日はゆっくり体の声を聞こう、早めに寝ようとか。10年で基礎ができて、ちょっと余裕が」

 舞台上でも、心にゆとりを感じるようになった。

 「宝塚って『何をやっても美しい』ところが魅力。私自身も、美しくあり、七変化の役者でありたい。この路線と決めたくはない。『彩風咲奈ここにあり。彼女にしかできない』と、思ってもらえるように」

 あこがれの前トップ、早霧が築いたような「唯一無二の存在感」を目指し、新生雪組の船出をけん引していく。【村上久美子】

 ◆MUSICAL FANTASY「CAPTAIN NEMO」…ネモ船長と神秘の島…~ジュール・ヴェルヌ「海底二万里」より~(脚本・演出=谷正純氏) 海洋SF小説「海底二万里」に登場するネモ船長を主人公に、潜水艦ノーチラス号で植民地支配をもくろむ国々に対し、敢然と戦いを挑む孤高の英雄を描くミュージカル。

 19世紀後半、イギリスの捕鯨船が南大西洋で謎の遭難事故を繰り返していた。イギリス政府は調査隊を編成し艦隊を派遣。だが「魔の海域」に近づいた艦隊は船底から爆発、沈没。わずかに生き残った学者が、救命ボートで地図にない島にたどり着くと、そこには地上の楽園を築こうとしていた「ノーチラス号」のネモ船長がいた。

 ☆彩風咲奈(あやかぜ・さきな)2月13日、愛媛県大洲市生まれ。07年に首席入団。雪組配属。新人公演主演は劇団最多タイの5回。11年「灼熱の彼方」でバウ初主演(彩凪翔とダブル)。14年「パルムの僧院」でバウ単独初主演。身長173センチ。愛称「さき」。