雪組の新トップコンビ、望海風斗(のぞみ・ふうと)と真彩希帆(まあや・きほ)の本拠地お披露目作「ひかりふる路(みち)」「SUPER VOYAGER!」が明日10日、兵庫・宝塚大劇場で開幕する。望海は希代の革命家にふんし、新生雪組を背負っての船出になる。宝塚公演は12月15日まで。東京宝塚劇場は来年1月2日~2月11日。

 雪組を率いて初めて立つ本拠地のセンター。芝居で望海が演じるのは、フランス革命を生きた希代の革命家、ロベスピエールだ。

 「恐怖政治の印象が強くあるんですけど、なぜそうなったのか、納得してもらえるようにしたい」

 反対派を処刑し「粛清」「テロ」の元祖とされる一方、理想を求めた「清廉」「正義」の人との顔もある。2種の側面。望海自身、理解できる部分も多い。

 「理想のために革命を戦い抜き、でも、自分が頂点に立ったとき、方向を見失ってしまった。上を目指して進むあたりは、似ているなと思いました」

 頂点へ向かい、まい進する男に共感、学びもする。

 「私はこれから、恐怖政治にならないように笑い)。幸い、そそのかす仲間もいないし、敵対する人もいないですけど。でも、周りをしっかり見ていかないと、って。彼から学ぶことはたくさんありますね」

 花組育ちの望海は、宝塚伝統の男役スタイルを極めようと、純粋に理想を追う。それゆえ、下級生には「厳しく、容赦なく言うこともある」と話す。

 「男役として一人前になれるヒントになれば、と。私自身も上級生から厳しくしてもらい、愛情をもらってきた。今は分からなくても、3年後ぐらいに分かってもらえればと思う」

 1世紀を超える劇団の伝統。トップとして次代へとつなぐ。その重みは人一倍、感じていた。8月、トップ初主演作で全国ツアーを回り、初日に大羽根を背負い、ファンを前に涙した。

 「自分の(主演)作品を、このメンバーで成功させなきゃいけない。丁寧に作ってきたので、幕が下りたときの拍手が温かくて…」

 稽古時には「想像を超える」と感じた大羽根の重さも、本番では感じないほど集中。リーダーとしての覚悟を持つと、同期の花組トップ、明日海りおへと思いをはせた。望海は明日海のトップ本拠地お披露目を最後に、雪組へ移った。

 「トップになって初めて、明日海の大変さがわかった。あのとき、もっと支えられたんじゃないかなと…。明日海の苦労に気付いたことで、少しでも罪滅ぼしというか…。分かって本当に良かったと思います」

 今年1年を総括する漢字には「大」を挙げた。「すごく“大”切で、“大”きく変わった」と説明。来年の言葉には「光」と答えた。「光に向かって進んでいく1年に」。望海が進むその先には「光」が降り注いでいる。【村上久美子】

 ◆ミュージカル「ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~」(作・演出=生田大和氏) 18世紀末、フランス革命の中心人物の1人、革命家のマクシミリアン・ロベスピエールの半生を描く。宿願の憲法承認を得たロベスピエールらはパリ市民から歓呼の声に迎えられるが、時代は混迷を続ける。理想を求め、頂点へ猛進する青年の身に起こる運命的なロマンス。彼が掲げた「自由・平等・博愛」へ込められた思いを探るミュージカル。

 ◆レヴュー・スペクタキュラー「SUPER VOYAGER!」-希望の海へ-(作・演出=野口幸作氏) ヴォイジャー(航海者)をテーマに、望海のトップ就任と新生雪組の「船出」を祝うレビュー。プロローグは豪華客船の出航をイメージ。

 ☆望海風斗(のぞみ・ふうと)10月19日、横浜市生まれ。03年入団。花組配属。09年「太王四神記」で新人公演初主演。12年「Victorian Jazz」でバウ初主演。14年「エリザベート」で出世役ルキーニを好演。同11月に雪組。抜群の歌唱力、宝塚伝統の男役然とした立ち姿に磨きをかけ、今年7月に雪組トップ。8月の全国ツアー「琥珀色の雨にぬれて」でトップ初主演。身長169センチ。愛称「だいもん」「ふうと」「のぞ」。