新トップに明日海りおが就いた新生花組で、6年目男役スター柚香光の進境が著しい。21日に兵庫・宝塚バウホールで開幕する「ノクターン -遠い夏の日の記憶-」(7月1日まで)に主演する。バウ初主演。昨年2月「オーシャンズ11」本公演で主要人物に抜てきされ、今年2月「ラスト・タイクーン -ハリウッドの帝王、不滅の愛-」新人公演で初主演。今回、バウ初主演となった。

 透き通るような美貌に妖しげな色気も備わってきた。昨年2月の「オーシャンズ11」。組子が若返り、本公演で前トップ蘭寿とむの仲間役に抜てきされ、1年半。新星から若手スターへ、立場は急変した。

 「この1年、変わりましたね。今回のバウも(今年2月初主演の)新人公演とほぼ同時に言われて。急にドーンときました」

 今作は19世紀ロシアを代表する文豪、ツルゲーネフの「初恋」をミュージカル化。モスクワ郊外の別荘地で、年上女性にひかれる青年の禁断の恋を描く。

 「若さゆえの情熱的な恋というか、自分に近い部分もあるので、役作りに悩むということはないですね」

 若者特有の危ない恋。ヒントは映画「タイタニック」のディカプリオだった。

 「ポスターを撮る時の髪形、雰囲気はディカプリオの写真を参考に。イメージがそうだったんです。恋に恋する感じですかね」

 もう1つ、自分と役柄との接点を心に落とし込んだ。寄宿舎生活の主人公は、帰省で緊張が解かれ、禁断の恋に心を焦がすが…。

 「規則に縛られている寄宿舎の学生がバカンスで解放されて、危ない香りにひかれていく。私自身(宝塚)音楽学校でも厳しい規則があって、はしゃいでいる同世代を見て思うこともあったし、その究極の気持ちなのかなって思います」

 役柄へのアプローチをゼロから築くことも初体験だ。今作はミュージカル。子供のころからクラシックバレエを習い、ダンスは得意。歌もありセリフも多い。

 「1幕ほとんど出ずっぱり。こんな量、覚えたことがなかった。でも、自分で作りあげる楽しさは違う」。花組は、蘭寿が退団し、新トップに明日海りおが就いた。

 「新人公演(7年目まで)で、上から2番目になり、下級生だからって『ついていく』感覚ではダメ。大先輩の蘭寿さんから舞台に対する姿勢、自分への厳しさを学びました」

 学校時代から劇団入りしても、すべての試験で首席だった蘭寿は、ストイックに男役芸を追求してきた。

 「退団公演でスケジュールは、寝る時間すらない中でも同じでした。その姿を毎日、おそばで見ていられただけでも、財産です」

 新生花組で主力と期待される。健康管理は…。

 「寝ないと、食べないとだめ。あとは笑うこと。眠くても、筋肉痛でも、心が元気なら、どうにかなる。仲間とたわいないことを話して笑っています」

 抜てきは続く。次作本公演「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」では、皇太子ルドルフ役だ。

 「ね! びっくりしますよね(笑い)。あこがれの役ですけど、事の重大さをよく考えると…大変」

 音楽学校の合格発表の日、身長は167センチだったが、今は171・1センチある。

 「男役として身長は、魅力を増すし、包容力も備わるので、もうちょっと伸びろって、念じています」

 肉体も、芸も伸び盛り。今年のテーマに掲げた「挑(む)」通りに、挑戦し続ける可能性は計り知れない。【村上久美子】

 ◆バウ・ミュージカル「ノクターン -遠い夏の日の記憶-」~ツルゲーネフ作「初恋」より~(脚本・演出=原田諒氏) 19世紀ロシアを代表する文豪イワン・ツルゲーネフの「初恋」をミュージカル化。寄宿舎生活のウラジミール(柚香)は、バカンスで訪れたモスクワ郊外の別荘地で、妖しげな年上女性ジナイーダ(華耀きらり)と禁断の恋に落ちる。父ピョートル(瀬戸かずや)と、同じ女性を愛してしまった…。

 ☆柚香光(ゆずか・れい)3月5日、東京都生まれ。09年4月、宙組公演「Amour それは…」で初舞台。花組配属。昨年2月の「オーシャンズ11」本公演では、主人公の仲間役、ターク・モロイに抜てき。前トップ蘭寿とむ退団公演だった今年2月の「ラスト・タイクーン -ハリウッドの帝王、不滅の愛-」で、新人公演初主演。身長171センチ。愛称「れい」。