ミュージカル「レ・ミゼラブル」初日記念会見を行う生田絵梨花
ミュージカル「レ・ミゼラブル」初日記念会見を行う生田絵梨花

先月25日に開幕したミュージカル「レ・ミゼラブル」(帝国劇場)でエポニーヌ役に起用された乃木坂46生田絵梨花(24)さんが、初日会見で役について語った言葉です。ミュージカルを志す女優なら1度は演じてみたいであろうエポニーヌの大役に、これまでのコゼット役から“キャラ激変”で挑んでおり、力強い魅力を発揮しています。

生田さんといえば、本人も自覚する通り「コゼットのイメージ」の人。主人公ジャン・バルジャンに大切に育てられた箱入りのお嬢さまです。17年版、19年版で演じていますが、お人形のようなかれんなルックス、透明感あふれる歌唱力は歴代コゼットの中でもかなりのはまり役という印象です。

一方のエポニーヌは、社会の底辺にいるストリートガール。犯罪稼業でずぶとく生きる両親の使い走りをしながら、革命家の学生マリウスに身分違いの片思いをする役どころです。両方演じた人がいないわけではありませんが、生田さんほどコゼットの印象が強烈にある人にとって、対照的なエポニーヌ役は大きな挑戦だったと思います。

帝国劇場ミュージカル「レ・ミゼラブル」(写真提供・東宝演劇部)
帝国劇場ミュージカル「レ・ミゼラブル」(写真提供・東宝演劇部)

治安の悪いパリの街に登場すると、コゼット色を一掃する大人びた目つきにびっくり。97年版から出演している森公美子さんも太鼓判の「すれっからし」ぶりを堂々と演じています。本人も初日には不安が消えたとし「地に足を踏みしめている感じ。エポの役の力を感じているのかもしれません」。どことなく持ち前の品の良さがにじんでしまったりもしますが、そんな不器用さもエポニーヌに重なり、応援しがいがあります。

歌声も、「地を這うような音色を出せるように、発声を変えてトレーニングしてきた」そうです。名場面「オン・マイ・オウン」の独唱など、キュートな中にもしぶとい馬力が宿り、マリウスの役に立つためなら恋敵にも塩を送ってしまうつらい奮闘が生き生き。悲劇のヒロインではありますが、それを押しつけてこないエポニーヌの潔さがいいんですよね。親子の愛、恋人同士の愛、夫婦の愛などさまざまな愛の形が描かれる作品の中で、「幸せな世界に縁などない」という彼女が手にする愛の形が切なく、生田エポもいい切れ味だと感じました。

コロナ禍で誰もが理不尽な戦いを強いられている中、結果はどうであれ、自分の人生を必死に戦った人たちの姿を描くレミゼは、いつもより増して心に刺さります。生田さんは「今できることに集中して、魂を込めていくことを意識して臨んでいます。お客さまに、心を少しでも受け取っていただければ」。確かに伝わってくるステージでした。

東京公演は帝国劇場で7月26日まで。【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)

ミュージカル「レ・ミゼラブル」初日記念会見を行う生田絵梨花(右から2番目)ら出演者たち(5月25日)
ミュージカル「レ・ミゼラブル」初日記念会見を行う生田絵梨花(右から2番目)ら出演者たち(5月25日)