19日にスタートした朗読劇「すぐ死ぬんだから」のけいこ場取材会を行った女優泉ピン子さん(75)の言葉です。70代女性のかっこいい生き方にフォーカスした内館牧子原作への愛着を語る中で、この世代の役の数が、男優と女優でまったく違うと格差を嘆きました。

「刑事ドラマだって、上の方はみんな男じゃない。男優の方が幅広いんですよ。女優が呼ばれるのはだいたい30代まで。それ以上はいません」。

確かに、ドラマに登場するあらゆる組織の幹部はほとんどが男性であり、50代からピン子さんのような70代までの役の数は圧倒的に男優さんの方が多いです。大河ドラマの武将役などもそうですよね。女性管理職のキャスティング枠はせいぜい1つか2つ。それ以外の、家族役や親友役などの争奪戦となります。「女優が呼ばれるのは30代まで」かどうかはさておき、ラブストーリーやお仕事ドラマのヒロインの年齢を過ぎると、役の数がいきなり減るのは間違いありません。

ピン子さんは「おばあさんの役ないわよ。昔はたばこ屋さんのおばあさん役とかあったけど、それも自販機やコンビニに。おばあさんの出番ないです」。そんな70代にして打ち込める主人公役に出会い、「ざまあみろ」とピン子さん流に歓喜しています。

そう考えると、朝ドラ5回、大河4回、2時間ドラマのシリーズもの、「渡る世間は鬼ばかり」など、この歳までずっと第一線で活躍してきたピン子さんは、あらためてスペシャル存在と感じます。「夢だった」という朗読劇に昨年初挑戦し、好評を受けての再演。「若い人が『勇気をもらった』と言ってくれたり、2回見てくださった方もいるの」。75歳の今も、受け手から求められていることに感激しています。

取材会では、女優として、妻として、波瀾(はらん)万丈の人生を振り返り、「悔いなく生きてきた。やり残したことはない。全然悔いはない」ときっぱり。朗読劇のタイトルにちなみ、「死ぬまでに仲直りしたい人」を聞かれると「ないっ」と食い気味に答えて取材陣を笑わせていました。

「この歳になったら、毎日おいしいものを食べて平和に生きる」。さらに「終活もやめた」とし、「夫に『ボケちゃったらごめんね』と言ったら『大丈夫、ボケたもん勝ちだから心配ない』って。ありがたいわね」。やめたという終活ですが、こちらからは完璧な形での終活完了に見えます。

昨年の初演を見ましたが、人生の晩年で夫のある秘密を知った妻の心の折り合いがかっこよく、竹を割ったようなキャラクターのピン子さんにぴったりなんですよね。甘くない女優業界を生き抜き、いよいよ充実の75歳に圧倒されるばかりです。

12月の東京公演(池袋・あうるすぽっと)まで全国ツアー中。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)