青春ドラマの金字塔「俺たちの旅」(75年)に主演した俳優中村雅俊さん(72)の言葉です。このほどDVDコレクションとしてよみがえり、放送から48年経った今も愛される作品の魅力を語りました。

それぞれの事情で将来設計の壁にぶち当たりまくる3人の若者が、「なんとかする会社」を立ち上げていく群像劇。子どものころに見ましたが、本当に面白かったですね。70年代は日テレドラマの黄金期。学園教師ものや、「太陽にほえろ」「傷だらけの天使」「探偵物語」といった刑事、探偵ものでさまざまなヒーロー像が描かれた中、三流大学に通う主人公カースケ、その親友オメダ、職を失った先輩グズ六という3人組の登場は、今振り返っても画期的でした。

主題歌「俺たちの旅」で始まり、その回を締めくくる散文詩とともにエンディングの「ただお前がいい」が流れるフォーマット。青春の輝き、ほろ苦さがずっしりと残る「俺たちの旅」の名演出ですが、中村さんによると「苦肉の策」だったというから驚きです。

クラスの問題を全員で解決したり、犯人を逮捕したりという分かりやすい事件性とは無縁の物語。「台本を読んで、脚本の鎌田敏夫さんに『あまりドラマがない』『どういう話なんスか? これ(笑い)』って電話して」と懐かしそうに振り返り「鎌田さんも試行錯誤で、こういう話でしたという補足として、苦肉の策で散文詩を考えたと言っていたのが印象的でした」と明かしてくれました。

サンプル資料で1話、2話を見ましたが、友情、恋愛、働くということ、生きるということなど、テーマが普遍的ゆえまったく色あせていないんですよね。よく遊び、よく怒り、よく悩むという陰影がくっきりしているのはいかにも昭和ドラマという感じです。経済がどんどん発展し、日本という国自体が青春みたいな時期。希望をもって成長していく時代の空気が作品の隅々に感じられます。

画面の勢いという意味では、撮影許可を取らないまま撮ってしまうことがしばしばあった“昭和ドラマあるある”も外せません。大きな声では言えませんが、今ではまず撮れないシーンの数々に、おおらかな時代を実感します。

オープニングで3人が歌舞伎町の噴水(昔ありました)をジャブジャブ横断する有名なシーンもそのひとつだったそうで、通行人のリアクションはゲリラ撮影ならでは。中村さんは「いきなり監督が『入れ、入れ』って。3人が隠れていて、監督のキューが出たら飛び込めと」。「そしたら、噴水の中がヘドロですごい。ズボッと腰までいっちゃって、ハプニングを監督がそのまま使っています」。

吉祥寺のアーケードでの“3人肩車”も、監督の突然のオーダーだったそうです。「監督が『ここで3人で肩車』って。誰が何番目かも分からない状態。どこにいても怖い(笑い)。真ん中の秋野さんが一番怖かったと思う」。

このところ、バラエティー界ではダウンタウンがおおらかすぎる昭和をうまく笑いにした企画でZ世代を巻き込んだルーブメントを作っていたりして、先月もそんな企画がギャラクシー賞月間賞を獲得するなど「昭和」がひとつの鉱脈となっているところ。昭和のドラマも今見るといろいろ新鮮で、あれこれ見返してみたくなりました。【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)