10月期の秋ドラマが出そろった。沢口靖子の35年ぶりフジ連ドラ主演、三谷幸喜の25年ぶり民放連ドラなど年輪を感じる企画が並ぶほか、母親なりすまし、父親なりすまし、マンション同居もの、アパート同居ものなど企画かぶりも目立つ。「勝手にドラマ評」第64弾。今回も単なるドラマおたくの立場から、勝手な好みであれこれ言い、★をつけてみた(主要枠のみ、シリーズものは除く)。

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月9ドラマ「絶対零度~情報犯罪緊急捜査~」(C)フジテレビ
月9ドラマ「絶対零度~情報犯罪緊急捜査~」(C)フジテレビ

◆「絶対零度~情報犯罪緊急捜査~」(フジテレビ系、月曜9時)沢口靖子/安田顕

★★☆☆☆

沢口靖子35年ぶりのフジ主演。ビターでスタイリッシュな「絶対零度」感が薄く、気合と人情のテレ朝刑事ドラマ寄りに。最先端の情報犯罪が相手だが、「走る沢口靖子」「井戸端会議で情報収集」「情に訴えてスラスラ自白」の流れ。もう少し令和感、チーム感で見たかった。守ると約束した協力者が容易に殺されたり襲われたりしがち。日本初の女性総理大臣(板谷由夏)の存在はタイムリーだが、愚かな娘に悩む母親、という母親属性でのみ登場。リアル女性総理の仕事ぶりが可視化され、ドラマ界もアップデートするチャンス。

月10ドラマ「終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-」(C)フジテレビ
月10ドラマ「終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-」(C)フジテレビ

◆「終幕のロンド-もう二度と、会えないあなたに-」(フジテレビ系、月曜10時)草彅剛/中村ゆり

★★★☆☆

遺品という視点から、故人の生きざま、読み取れるメッセージを丁寧に物語にした快作。主人公の誠実な仕事ぶりに草彅剛が合い、作品に体温を乗せてくれるのはさすが。孤独死は一律さみしいという固定概念を遺品の描写から否定したひと言に、プロとして信頼が置ける。妻を亡くした主人公、息子を亡くした社長などチーム周辺にも故人への後悔があり、彼らが遺品整理を通じて少しずつ前に進むのもドラマチック。テーマとして完成しているので、平行して描かれる“財閥一族”のギスギスしたバトルや、そこで暮らす気の毒な妻との不倫などの韓ドラ要素は必要ないのでは。

ドラマプレミア23「シナントロープ」(C)此元和津也/「シナントロープ」製作委員会
ドラマプレミア23「シナントロープ」(C)此元和津也/「シナントロープ」製作委員会

◆「シナントロープ」(テレビ東京系、月曜11時)水上恒司/山田杏奈/染谷将太

★★★★★

ハンバーガーショップの若者たちの熱い青春と、逃げている強盗犯たちの冷めた青春が同時進行し、トータルどっちもまずい方向に行っていそうな不穏に独特のテンポあり。うまい若手を集めて何かやろうという攻めっ気が良く、実際うまい人たちの会話劇はぐいぐい走る。ダルうざいが妙に頼りがいがある主人公を水上恒司がバッキバキの目で演じていて笑う。強盗犯リュウちゃん、キュウちゃんのムダ話も聞き捨てならず、生き方がヘタすぎるリュウちゃん役のアフロは今期の助演男優賞。脚本、演出に信頼が置けるので、出口不明な物語に最後まで付き合う。

連続ドラマ「ちょっとだけエスパー」(C)テレビ朝日
連続ドラマ「ちょっとだけエスパー」(C)テレビ朝日

◆「ちょっとだけエスパー」(テレビ朝日系、火曜9時)大泉洋/宮崎あおい/岡田将生

★★★★★

再就職先で“人に触れると心の声が聞こえる”能力を授けられたどん底サラリーマンが、世界を救う謎の任務に就く。花を咲かせる、動物と話せるなどちょっとした能力者たちが、「ターゲットを5分早く目覚めさせる」などちょっとしたミッションを達成し、結果的に誰かを救うことになるバタフライエフェクトな仕掛け。野木亜紀子氏待望のオリジナルSFドラマ。バカバカしい積み重ねが後にすごい全体像を描き出しそうで、SF世代としては期待しかない。心の声が聞こえるというむごい能力、同居する“妻”の謎、人を愛してはいけないルールなど、SFらしいビターな香りが早くも隅々に。

火9ドラマ「新東京水上警察」(C)フジテレビ
火9ドラマ「新東京水上警察」(C)フジテレビ

◆「新東京水上警察」(フジテレビ系、火曜9時)佐藤隆太/加藤シゲアキ/山下美月

★★★☆☆

連ドラ界初の「水上警察」ドラマ。マリンものなのに夏にやらない季節外れが残念だが、小説原作とあって、発生する事件そのものはしっかり。介護問題、昭和40年代過激派グループのD作戦などあれこれ盛り込んだ序盤の連続殺人も破綻がなく、警備艇での第六台場上陸など映像的にも新鮮だった。全体的に低予算感が漂い、組織の偉い人たちのまったりしたシーン多め。「海猿」のような躍動感、疾走感を期待するとしんどいかも。警察ドラマ初挑戦の山下美月が、組織の中で成長する若者像をすっきりと表現していてすてき。

火曜ドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(C)TBS
火曜ドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(C)TBS

◆「じゃあ、あんたが作ってみろよ」(TBS系、火曜10時)夏帆/竹内涼真※ダブル主演

★★★☆☆

「料理は女が作って当たり前」「顆粒(かりゅう)だしは手抜き」「おかずがどれも茶色い」「君のためのアドバイスだから」。親由来のズレた“男らしさ”で恋人を失った男が価値観をアップデート。この時代にこの若さでこんな化石がいるのかと、とんだ“筑前煮男”爆誕にネットが大ウケ。基本ドン引きだがギリギリ憎めない境界線で竹内涼真は神。「俺、変わりたい」。麺つゆ作ったり後輩にキレられたりと、底辺からの成長に応援しがいがある。3話で中条あやみ社長登場。おでんをめぐる減らず口の応酬にげらげら笑わされ、元恋人(夏帆)への未練より、こっちの価値観バトルの方が躍動感あり。

水10ドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(C)フジテレビ
水10ドラマ「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(C)フジテレビ

◆「もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう」(フジテレビ系、水曜10時)菅田将暉/二階堂ふみ/神木隆之介/浜辺美波

★★★★☆

1984年の渋谷の劇場を舞台にした青春群像劇。三谷幸喜氏25年ぶりの民放連ドラ。エースで4番のスター選手が大集結しすぎて、くすぶった人たちの場末感とは対極のような。情報渋滞の騒々しい1話だったが、演出家、久部(菅田将暉)の再起が動き始めた2話からギラギラした昭和の人間模様が動き出した。久々に大声キャラの菅田将暉が無双の仕上がり。激アツに挑み、フルスイングで落ち込んで色気あり。「分からなくていい、理解しなくていい」。特に解説もなくシェークスピアが進み、物語の行き先も不明なあたり、説明過多の時代にある意味貴重。ドラマより、舞台作品で見たい味わい。

木曜劇場「小さい頃は、神様がいて」(C)フジテレビ
木曜劇場「小さい頃は、神様がいて」(C)フジテレビ

◆「小さい頃は、神様がいて」(フジテレビ系、木曜10時)北村有起哉/仲間由紀恵

★★☆☆☆

「子どもが20歳になったら離婚する」。約束を支えに生きてきた妻と、本気だと思わなかった夫のすれ違い。ホームコメディーのはずが、女性に生まれたことへの折り合い、母親になったことへの後悔といったガチテーマにはまって暗い自分語りワールドに。多様性あふれるおしゃれマンションの暮らし、痛みを認め合う優しい世界。いろいろ今風だけれど、人の離婚をみんなで考える令和の長屋テイストは苦手だった。いい人だけど、微妙にイラッとする夫像がうまい北村有起哉&草刈正雄。優しさで押し黙って歯ごたえがないので、男心を盛大に主張するトンデモ野郎が1人ほしかった。

金曜ドラマ「フェイクマミー」(C)TBS
金曜ドラマ「フェイクマミー」(C)TBS

◆「フェイクマミー」(TBS系、金曜10時)波瑠/川栄李奈※ダブル主演

★★★★☆

職を失った東大卒(波瑠)が、元ヤン社長(川栄李奈)の6歳娘のため母親になりすましてお受験突破。デキる女性ほど組織で挫折させられる令和の会社風景、社長になっても超えられない学校システムと母親社会の壁など、それぞれの手詰まりが丁寧に描かれ、「バレたら人生終わり」の“母親なりすまし契約”を応援できる。入学したい目的がきちんとあり、親のエゴのお受験バトルものとは一線を画していて見やすい。「子どもの幸せ」でつながった女の友情もの、それぞれの立場のお仕事ものの味わい。

日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」(C)TBS
日曜劇場「ザ・ロイヤルファミリー」(C)TBS

◆「ザ・ロイヤルファミリー」(TBS系、日曜9時)妻夫木聡/佐藤浩市/目黒蓮

★★★☆☆

日本一の競走馬を育てて有馬記念で勝つ。会社社長に誘われ競馬事業に転身した税理士が、ともに夢を追う。「陸王」「ノーサイド・ゲーム」など不採算チームの逆転劇は手堅いジャンルだが、「男のロマン」ばかりがかっこいいブロマンスワールドで蚊帳の外感。北海道日高地方の雄大な景色、JRA全面協力による迫力のレースシーンなど、日曜劇場にしかできないクオリティーは圧倒的なので、好きな人はぜひ。「20年にわたる壮大なストーリー」のカギを握る目黒蓮が今後どう登場し、主人公とかかわっていくか。馬の血統のように、人の思いもドラマチックに継承されそう。

土曜ドラマ「良いこと悪いこと」(C)NTV
土曜ドラマ「良いこと悪いこと」(C)NTV

◆「良いこと悪いこと」(日本テレビ系、土曜9時)間宮祥太朗/新木優子※ダブル主演

★★★★☆

小学校の卒業アルバムで顔を塗りつぶされていた6人が次々と不審死。22年前のいじめの加害者と被害者が真相を追う。努力して人生を変えてきた被害者、どの子(新木優子)の憎悪と奮闘がよく分かり、真相究明のため、いじめの主犯だったキング(間宮祥太朗)と手を組むしかない事情作りがうまい。将来の夢にちなんだ殺害方法、童謡の通りの殺害順など、見立て殺人の客寄せ感もばっちり。キング自身も何か秘密を抱えていそうで、3話でどいつもこいつも怪しい世界観が組み上がった。夢をかなえた人、変われなかった人の物語がしっかりある考察ドラマ。03年の世相も、平成ブームに合う。

日曜ドラマ「ぼくたちん家」(C)NTV
日曜ドラマ「ぼくたちん家」(C)NTV

◆「ぼくたちん家」(日本テレビ系、日曜10時半)及川光博/手越祐也/白鳥玉季

★★★★☆

心優しき50歳独身、恋に冷めている38歳教師、両親不在の15歳女子中学生が始める奇妙なアパート同居もの。設定多すぎの1話だったが、学校対策で“お父さんなりすまし契約”が動き出した2話から急に世界観が出て面白くなった。迷いながら“娘”と向き合う日常の激変を21年ぶり連ドラ主演のミッチーがまごころ込めて演じ、疑似家族で描く「家族」の問いかけがさりげない。「好きなものは見つかるよ。いつかきっと、1つや2つ」。すてきなせりふが毎週あちこちにあり、同局の名作「すいか」に似た雰囲気。進路から目を背けていた娘が、みそ汁の具からちゃんと未来を選び始めた3話のせりふは何度でも聞きたい。

【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)