「Tシャツが乾くまで」「VIVANT」など話題作豊富な夏ドラマ。主要枠以外にも佳編が多く、テレビ朝日系「名探偵のままでいて」(金曜午後11時15分)もそのひとつ。個人的に「Tシャツ」にどハマりしている夏ですが、“裏1位”は「名探偵」で決まり。金曜日は「Tシャツ」(TBS系金曜午後10時)からの「名探偵」という、ぜいたくなはしごを満喫しています。
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「名探偵のままでいて」は、「このミステリーがすごい!」大賞受賞作をドラマ化。ミステリーマニアの小学校教諭、楓(吉川愛)と、認知症の祖父(奥田瑛二)という異色バディの推理ものです。
「遺品の本にはさまれていた4枚の訃報記事」や「劇団員の奇妙な返事」など、ちょっとした日常のミステリーを発端に、思ってもみない人間ドラマが広がっていく物語性が抜群。こつぜんと姿を消したマドンナ先生(2話)、「おんな きえた さがして」のショートメッセージ(3話)など各話のテーマもカラフルで、人間の切なさ、力強さがキラキラとした後味を残す作風がすてきなのです。
ちなみに、「名探偵」は祖父のほう。文学好きな元校長という圧倒的な教養と、認知症による幻視が交錯する、この人にしか解けない推理をうまく映像化しているんですよね。4月期に話題を集めた「月夜行路」(日本テレビ)と同様、文学トリビアを突破口とする立て付け。この人の心の痛みが、個々のエピソードに込められた「誰かの願い」と重なるのです。
家から出ることのない“安楽椅子探偵”のかわりに、謎の種を拾ってきたり、手足となって動き回ったりする楓(吉川愛)、四季(綱啓永)、岩田(髙松アロハ)の3人組も魅力的。人と関わり、成長していく若者たちの輝きは、今期いちばん夏。いつか終わる名探偵との日々、という夏っぽいコントラストも感じさせ、ミステリーを題材にしたひと夏の人間ドラマをぐいぐい見せてくれます。
楓のストーカーをあぶり出した4話の切れ味はSNSでも話題に。祖父の観察力&洞察力、身近にいた犯人の正体、誰かを思って動いた四季、岩田のナイスプレー、どんでん返しと悲しすぎる真相など、作品の醍醐(だいご)味が隅々にありました。短編連作の原作をうまく分解し、連続ドラマとして再構築する脚本力と、原作愛を共有するチームの力を感じるエピソードでした。
ラストで四季くんが楓に告白し、恋愛模様が動き出したのも最高展開。不可能犯罪の巨匠ディクスン・カーをめぐる最悪な出会いから「スポーツをしない理由」が回収された3話の涙まで、屈折キャラの人間味が丁寧に描かれてきたので、ラブ要素がありがた迷惑にならないんですよね。
「楓さん。きょう、どうしても言わないといけない気がしました」からの心を込めた胸キュンシーン。理屈っぽい男だが告白は一直線、というギャップを綱啓永が端正に見せてくれて、心に残る名場面。ああいうシンプルな名ぜりふに出会える俳優は果報者と感じます。
きょう14日放送の5話(※5話は11時45分から)から新章スタート。四季に先に告白されてしまった岩田くんの出方はもちろん、教え子の合流やミステリー好きな新キャラ登場など、名探偵周辺がにぎやかになりそうで、ますます楽しみです。
実は金曜は、「Tシャツ」「名探偵」のほかに、法廷でラップというトンデモ設定の「リーガルビート-逆転の法廷-」(主演鈴鹿央士、テレビ東京系午後9時)もすてきな人間ドラマを描き中。快作3本のはしごとか、金曜が幸せすぎます。【梅田恵子】(ニッカンスポーツ・コム/芸能記者コラム「梅ちゃんねる」)




