喉頭がんで療養中の音楽プロデューサーつんく♂(46)が4日、声を失ったことを明かした。プロデューサーを務める近大(大阪・東大阪市)の入学式に出席し、声帯を摘出する手術を受けたことを発表した。

 頭頸部(けいぶ)外科の第一人者、亀田総合病院(千葉県鴨川市)の岸本誠司医師は、つんく♂の病状について「早期がんなら放射線や抗がん剤などで治る。選択できなかったのは、進行していたからでは」と分析した。治療はステージ1、2までは放射線治療か部分切除が主だが、ステージ3まで進行すると全摘の可能性が出てくるという。

 岸本医師によると、頭頸部のがんは、がん全体の5%。坂本龍一や大橋巨泉が患った中咽頭がんも、食道と気道の交差点の役割をする部分が侵されるなど、日々の生活が脅かされる深刻ながんと指摘する。喉頭がんは、臓器の構造上「(正常部とがん部分の)ギリギリを切らざるを得ない。手術は非常に難しく、再発のリスクを負う」と言い、老人の場合は全摘するケースが多いという。

 原因の9割以上が喫煙だが、飲酒も引き金になる。「飲酒後すぐ顔が赤くなる人は、アルコールに含まれる発がん性物質アセトアルデヒドを分解する酵素が欠けていて、体内に残るので、がんになりやすい」。

 その上で、岸本医師は、喉頭がんを患いながら、声帯の全摘を最後まで拒否して亡くなった著名人がいたことを例に言った。「治すことを優先し、つんく♂さんは思い切った、すばらしい決断です」。