朝日放送(ABC、大阪市福島区)の清水次郎アナウンサー(44)が公立中学・高校の社会科教師を目指すため同局を退社することが18日、分かった。

 阪神タイガースの実況中継などでおなじみの人気アナの異例の転身。通信教育により教員免許を取得予定で、3月末にテレビ、ラジオから離れ、7月の教員採用試験に向けて勉強に専念する。有給休暇を消化する6月中旬が正式退社となる。

 野球実況歴21年の清水アナが第2の人生として教職の道を目指す。21日のABCラジオ「福本豊の虎たまデラックス!」(午後8時45分)でリスナーに退社を報告する。周囲から引き留める声もあったが「無謀と言われるかもしれないが、教師として思春期の子どもたちに寄り添っていきたいという思いを抑えることができない」と決断した。

 異色の転身のきっかけは、伝えてきたさまざまな少年事件だった。「まだ子どもと言える世代が加害者になったり被害者になったり。なんとかならなかったのだろうか…」。数年前からその思いは強まり、11年から中学・高校社会科の教職免許取得のため通信教育を受け始め、メドが立った。4月からは教員採用試験の勉強に専念する。

 清水アナは早大卒業後、94年に同局入社。阪神の情報番組「虎バン」のメーンキャスターを11年務め、阪神戦や夏の甲子園などの実況では、落ち着いた声と的確な描写で同局の野球アナのエースとして活躍してきた。13年10月13日のCSファーストステージ、広島との第2戦。桧山選手が現役最後の打席で放った代打2ランを「だからタイガースファンはこの男を神様と呼んだ」と伝え、ファンの記憶に名調子を刻んだ。

 元高校球児、大の阪神ファン。好きな野球を追いかけてきた22年間だった。「中途半端になるのは野球に対して失礼」との思いで退路を断った。相談した当初、転身を反対された星稜高野球部の山下智茂名誉監督(71)には「教師という職業はお金は残らないけど人は残る」と金言をもらった。「マイナスからでもいい。経験を積んで少しでも人の役に立ちたい」。来春、45歳の新任教師を目指す。

 ◆アナウンサーの転身 元フジテレビの菊間千乃さんは07年に退社後、10年に司法試験に合格し弁護士に。元テレビ朝日の前田有紀さんは13年に退社、生花店に。政治家への転身例は多く、民主党小宮山洋子元衆院議員は元NHK、自民党丸川珠代参院議員は元テレビ朝日。