生もののエンターテインメントは、演者と観客が一体となって作られるものだと、あらためて感じた。

 13日夜、柳家小三治が、頸椎(けいつい)手術から約3週間ぶりの高座復帰を果たした。会場入りする時は、首に保護具を着けていた。足取りはしっかりしていたが、そろそろと歩いていた。こちらの姿を見つけると、小さな声で「ありがとね」と言ったが、手術から間もないだけに、さすがに、元気いっぱいとはいかなかった。後で話を聞いた時、小三治が「お客さまの前で声を発することができるかどうか分からなかった」と言っていたのは、大げさではなかったと思う。

 高座に上がると、大きな拍手と「待ってました」の掛け声。会場を見渡した後「戻ってまいりました」と言った言葉に実感がこもっていた。観客の温かさと、よく笑う姿を見て、徐々に小三治も、乗っていった。

 終わってみれば、まくら30分以上、ネタの「粗忽(そこつ)長屋」と合わせ、約1時間の大熱演だった。

 さらに、復帰を祝うため、観客がメッセージカードを書いてくれていた。受け取った小三治は、「こんなにうれしいことはない」と大喜びで、終演後も「本当に、いいお客さんだった。あったかかった。噺(はなし)の心も分かってくれて」。

 まだ、首に痛みはあるそうだが、高座では、痛みを忘れていたという。いかに充実した高座だったかが、分かった。帰る時には、会場入りした時には付けていた保護具もなく、声に張りもある。笑顔で「100歳より、もっと生きる」宣言も飛び出した。

 観客に元気をもらったのが、ありありと分かった。