「7代目笑福亭松喬襲名興行」が8日、大阪松竹座からスタートし、昼の部の口上には、桂ざこば(70)桂文枝(74)笑福亭鶴瓶(65)らが並び、ざこばは口上で「祝儀渡すの忘れてた」と“笑撃”の告白をして客席をわかせた。

 7代目松喬を襲名した笑福亭三喬(56)を真ん中に、師匠連が横一列で頭を下げ、厳かなはずの口上。ざこばは唐突に「実はあんたに謝らないかん」と主役に向かい、話し始めた。

 「5月に脳梗塞やったやろ…」などと、闘病してきた近況を説明した後に「もう今まで、ほんま今まで、ずーっと忘れてました。ほんま、すいません。いまさらやりにくいし、いやそれでもすべきか…悩んでます」。祝儀を渡しそびれていたことを壇上で告白し、謝罪したのだった。

 三喬は肩を震わせ、文枝はあぜん、そして、鶴瓶は声をあげて大笑いを始めた。そんなざこばに、鶴瓶が「ざこば兄さん! やるべきですよ、ちゃんと! 10万! 10万! 渡してくださいっ! 私は祝儀、10万円渡しましたから」とつっこみ。すると、場内は爆笑の渦に包まれた。

 以前は、祝儀の額で張り合った時期もあったようで、ざこばは「10万? 私はもう、あんたと戦う気はありません」と返し、また客席は爆笑。毒っけが抜けたざこばを鶴瓶は「兄さん、大丈夫かな」と心配し「昔は祝儀の出し合いで、どんどん(額が)上がって、カードで(祝儀を)出したこともあったのに」と振り返りつつ、過去の争いを打ち明けた。

 落語家の口上らしい、爆笑セレモニー。鶴瓶は続けて、故6代目笑福亭松鶴さん一門の兄弟子だった6代目松喬さん(享年62)へ思いをはせた。

 先代の松喬さんは、師匠松鶴さんの芸風を最も受け継いだ職人肌。上方落語を背負う期待が高まる中、13年7月に亡くなった。鶴瓶は「先代にはかわいがっていただき、襲名を聞いたときは本当にうれしかった」と話した。

 鶴瓶によると、兵庫県小野市出身だった先代松喬さんは、師匠の松鶴さんに「なまってる」と何度も怒られ、口調を克服。「努力の人だった」と言い、襲名した三喬も「同じぐらい努力の人」と、7代目としての精進を期待した。

 また、文枝は「今日、新しい松喬という花が咲きました」。故3代目桂春団治さん一門の筆頭、桂福団治(76)は「先代の松喬くんとは芸論もよく戦わせた。三喬くんも芸はもちろん、人物もすばらしい。このあとの上方落語を背負ってほしい」と祝福した。

 江戸から駆けつけた柳家さん喬(69)は「これ(三喬襲名)で『さんきょう』は1人になりました」と笑わせた。

 当の三喬は「過分な言葉をいただき、本日から7代目松喬として高座へ上がらせていただきます」と神妙にあいさつ。師匠譲りの武骨ながらも、柔らかい語り口で、昼の部では、落語家を志すきっかけになった「初天神」を演じた。

 襲名興行は来年4~5月予定の大阪・道頓堀角座まで、福岡、鹿児島、京都、愛知、北海道、兵庫、島根、新潟などを回る。東京では来年4月15日、よみうりホールで開催する。