仕事とはいえ、ぜいたくな時間を過ごさせてもらうことがごくまれにあります。

 先日、バイオリニスト葉加瀬太郎(49)が来年4月に開校するオンライン型バイオリンスクール「葉加瀬アカデミー」の記者会見を取材したときのことだ。

 会見中、講座のエッセンスを紹介する目的で、葉加瀬がコンサートで行っている企画「太郎さんとバイオリンを弾こう!」を再現した。バイオリン初心者が、葉加瀬から手ほどきを受けて、実際にセッションしてみるという企画で、この日は会見の司会を務めたラジオパーソナリティーのレイチェル・チャンが実演することになった。

 バイオリンを手にした葉加瀬がチューニングを始めると、伴奏のピアノとコントラバスと何やら目配せすると、おもむろにあのTBS系「情熱大陸」のオープニングテーマを弾き始めたのだ。「調整ですよ」と話ながら、優雅に演奏すると会場は拍手に包まれた。一気に、葉加瀬の(半分くらい「情熱大陸」の)世界観に引き込まれた。

 バイオリンの持ち方、構え方、弓の弾き方をレクチャーすると、レイチェルの反復の音色をベース音に、今度は「エトピリカ」の演奏だ。思わず目を閉じた。頭の中で、勝手に自分がドキュメンタリー番組に取り上げられる様が浮かんだ。あんなこともあったな、こんなこともあったな…。

 そんな妄想はさておき。葉加瀬は「バイオリンは敷居が高いイメージがあるけれど、実はそうでもないということを直接伝えられる機会が増やせると思うし、少しでも触れてもらえる喜びを感じてほしい」と今回のスクール開校を決意したという。そんな熱い思いを感じながらも、短い時間だったが、優雅な気持ちも味合わせてもらった。