女優芳根京子(20)主演のフジテレビ系連続ドラマ「海月姫(くらげひめ)」(月曜午後9時)が、今日15日にスタートする。

 フジテレビの看板枠「月9(げっく)」だ。「月9」という言い方が、いつから言われ始めたか定かではないが、90年代初頭のトレンディードラマの時代にCX(フジテレビ)の人たちが言い出した(笑い)。

 個人的にはトレンディードラマのプロデューサーだった大多亮フジテレビ常務(59)が制作発表の席で、初めて「月9」と公の場で言ったのを覚えている。気になるので、日刊スポーツ紙上に初めて「月9」という言葉が出てきたのを調べたら91年10月15日付、今から26年3カ月前に「テレビの仕掛け人」という、記者が担当してたテレビ欄で初出していた。大多プロデューサーではなく、なんとフジテレビ前社長の亀山千広BSフジ社長(61)のプロデューサー時代だった(笑い)。

 フジテレビの看板ともいえる月曜午後9時台のドラマ、通称“月9(げっく)”のプロデューサー。9月まで放送された“月9”「101回目のプロポーズ」は最終回36・7%という高視聴率をマークした。「逢いたい時にあなたはいない」は初回22・5%。順調な滑り出しに「ホッとしました。うれしいですね」と笑顔を見せる。

 「逢いたい時-」のテーマは遠距離恋愛。転勤で東京と札幌に離ればなれになった恋人を、中山美穂と大鶴義丹が演じる。

 「今までのドラマでは好きであり続けるために理由はいらなかった。二枚目とか、かわいいということだけで、なんとなく恋愛が成立した。だけど二人の間に距離があると、好きであり続けるためには理由が必要だ」

 亀山さんは以前、中山美穂主演のドラマ「なまいきざかり」の編成を担当したことがある。「彼女を視聴者と同じ視点で見ていた。だから、今回も彼女のやりたいことと、こちらのやろうとすることが、うまく意思統一できた。美穂ちゃんは、最大多数の女の子が共感できる女の子です」

 高視聴率を取るためのカギは「どこまでハートに引っ掛かるデコレーションをできるか」にかかっている。

 9月に行った北海道ロケでの雪のシーンにはスノーマシンを使った。「金をかけたからといって数字が取れるわけじゃない。視聴者のハートにどこまで入っていけるかが勝負です」。

 常に時代の先を見越してドラマを作る。フジテレビの強さは、そこにあるのかもしれない。

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 最後に「常に時代の先を見越してドラマを作る」とあるが、現状はどうだろうか。月9の前作である「民衆の敵」は、最終回の視聴率が4・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、月9史上ワーストを記録した。今期の月9も、予定したドラマから、急きょ変わったと聞いている。

 原作は累計420万部超の東村アキコ氏の人気漫画。芳根が演じるのは幼い頃に亡き母親に連れて行かれた水族館で海月(クラゲ)に魅了されてしまった“クラゲオタク女子”の倉下月海(つきみ)。イラストレーターを夢見て鹿児島から上京。だが、自らを“尼~ず(あま~ず)”と呼ぶ、オタク女子たちと一緒に外部との接触を避け、自分たちの世界だけに浸っている。コメディー初挑戦で分厚いメガネを掛けたド近眼のオタク女子を演じる芳根は「すごく楽しいですね。鏡を見て、すごく自然に受け入れられました。衣装がスエットの時が多いので、すごく楽で楽屋にいるような気分です」と話している。

 「海月姫」と聞いて、思い出すのは14年に公開された映画「海月姫」だ。主演女優の独立騒動の影響などもあって、豪華キャスティングにもかかわらず地味な興行収入に終わった記憶がある。今作も、月9枠の不振もあって、11日に行われた試写会の前の晩の芸能デスクとの打ち合わせでも「急きょのドラマらしいから期待薄。まあ、4・6%を上回ればいいか」などと話していた。

 ところが、第1話の試写を見てぶっとんだ。面白いのだ。インタレストではない、笑えるのだ。爆笑、爆笑に次ぐ爆笑。お笑い担当記者ならではの爆笑ではないかと周囲をうかがうと、ネットのお姉さん記者も夕刊紙のお姉さん記者も、涙を流すほどの大笑い。トレンディードラマ世代の記者たちだけにウケてるんじゃないかと、さらに広範囲に気を配ってみると、若者たちも声を出して笑っている。思わず、最近は辛口の嫌みしか言ったことないフジテレビ関係者に「おもしろいよ、これ」と、興奮して話し掛けた。

 月海と三角関係になるのがイケメン兄弟。すごい美女に見えるが実はイケメンプレーボーイの兄役の瀬戸康史(29)。14年のフジテレビ系の今は亡き土曜ドラマ枠(違う形で復活したけど)の「ロストデイズ」で主演して以来、瀬戸ファンを公言しているが抜群にいい。イケメン女装男子を軽やかに演じている。共演の要潤(36)も「僕はイケます」と太鼓判を押している。

 弟で父の秘書を務める、女性経験ゼロの童貞エリート役の工藤阿須加(26)もいい。「どうすれば童貞感を出せるか日々、頑張っています」と話しているが、まだまだ初々しい演技が童貞感丸出しだ(笑い)。

 そして何より、すごいのが月海のオタク仲間の尼~ずの面々。中でもすごいのが元SKE松井玲奈(26)演じる鉄道オタクのばんばさん、と内田理央(26)演じる三国志オタクのまやや。

 松井珠理奈と並ぶSKEのエースだった松井は、AKB総選挙の神セブンの常連だったが、女優の道を選んで15年に卒業。舞台「新・幕末純情伝」で主人公・沖田総司を演じるなど、着実にキャリアを積んできた。それがアフロのヅラの鉄道オタク。たき火の最中にアフロに火が燃え移る場面まである(笑い)。

 内田理央は10年に「日テレジェニック」に選ばれてデビュー。テレビ朝日系「仮面ライダードライブ」や映画「Mr.マックスマン」シリーズではヒロインを務めた。ファッション誌「MORE」では専属モデルも務めている。前髪を長くたらした赤いジャージー姿で、ことある度に三国志の故事をまくしたてながら突進する。

 恐ろしいのは、松井、内田ともに髪の毛で目が隠れ、誰が演じているのかほとんど分からないことだ。キャスティングを知らずに見て「小劇団出身の女優さんも演じているんだな」と思っていたが、後からびっくりした。視聴率低迷からキャスティングが難航していることが伝えられる月9だが、こんなぜいたくをしているとは思わなかった。本人、事務所ともに、オファーを受けた勇気をたたえたい。

 現状、長寿バラエティーの打ち切りが次々と決まったフジテレビで一番笑える番組だ。これほどまでに面白いドラマがなぜ急にできたのか。面白さの秘密を探るべく、スタッフを隅から隅まで精査した。そこで演出の石川淳一監督(46)にたどりついた。08年フジ「シバトラ」、09年「メイちゃんの執事」「任侠ヘルパー」、12~14年「リーガルハイ」シリーズ、そして昨年は映画「ミックス。」を監督している。面白いはずだ。

 コメディーだけじゃなく、ストーリーの軸は月9らしく? 三角関係のラブストーリー。もしかしたら、初回の視聴率は低いかもしれない。でも、だまされたと思って、とにかく見てください。爆笑するはずです。