木村拓哉(45)主演のテレビ朝日系「BG~身辺警護人~」(木曜午後9時)が18日スタートする。

 16年末のSMAP解散から1年。ジャニーズ事務所所属としては史上初の、個人でLINEスタンプになるなど、新たな世界への挑戦を切り開いている木村自身の今の姿を投影したような役どころであり物語だと、1話の試写を見て感じた。

 木村が演じる島崎章は敏腕ボディーガードとして活躍も、ある失敗をきっかけに一線を退き、民間の日ノ出警備保障の警備員として工事現場で働いていた。その中、社内で身辺警護課が新設されることを受けて、着任を打診される。「失敗を犯した者は、現場に戻れません」と固持するが、社長の今関(永島敏行)の強い希望を受け入れる。

 現場への復帰が決まった島崎がトレーニングするシーンが目を引いた。川べりをジョギングする中、足の痛みから顔をしかめていた島崎が、大きく両手を振ってダッシュしたり、鉄棒を使った筋トレをするようになる。島崎が警護の現場を離れていた6年の時を感じさせ、木村の息遣いも聞こえてくるようなシーンだ。

 また島崎が、身辺警護課初の仕事として取り組む隅田川マラソン大会の警護のため、スタート地点のスタジアムへ向い、1から足を使って事前調査する姿も印象的だ。中でも、島崎が壊れかけのベンチに腰をかけて尻もちをつく場面は最大の見どころだろう。15日に都内で行われた試写会でも、500人のファンから大きな笑い声が起きた。

 劇中では、息子とのコミュニケーションに悩む島崎のシングルファザーの一面も描かれる。木村は完成披露舞台あいさつで、そこを引き合いに「BG-」の特異なポイントを説明した。

 木村 普通のドラマは話している相手の目を見ることが多いですけど、今回は警護中、クライアントの目を見るよりも周りに気を配っていることが多いので、不思議な会話劇が毎回ある。息子とのシーンは、クライアントではなく1人の家族として接することが出来るので、こちらはしっかりアプローチするんですけど、多感な少年なので冷た~くあしらわれる。

 木村と息子の瞬を演じる田中奏生(11)は、12年のフジテレビ系月9ドラマ「PRICELESS~あるわけねぇだろ、んなもん!~」で共演した。木村はそのことを、MCを務めるTOKYO FM「木村拓哉のWhat’s UP SMAP!」に届いた、リスナーからのメールで知ったと明かした。

 木村 自分、ラジオをやっていまして、届いたメールで気付いたんですけど以前、違う作品で彼とご一緒していたみたいで…その時、すごいちっちゃかったんですよ。歯も抜けちゃって、撮影の時には差し歯をしているみたいな子でしたけど、今回、また共演できて…すごい、でっかくなっていてビックリしました。

 地べたをはいずり回るように働き、父親としても苦悩する島崎は、華麗な役どころを演じることが多かった木村が、45歳になった今だからこそ出会い、リアリティーを持って演じられる役どころだろう。

 そして、忘れてはいけないのは、木村とは04年のフジテレビ系「プライド」以来14年ぶりの共演となる、厚生労働大臣の立原愛子を演じる石田ゆり子(48)だ。1話では「自己責任」などの失言で退陣を求める声が高まり、スターターを務める隅田川のマラソン大会を前に「退陣なくば、死の号砲が鳴る」と書かれた脅迫文を受け取る。そうした微妙な立場の中、立原が政界の重鎮に土下座する場面がある。石田の土下座姿も、木村の尻もちと並ぶ必見のシーンだ。

 島崎が、スタジアムで警護プランを練る場面では、島崎の脳裏に浮かんだ爆発シーンを実際に撮影した。その際、爆発があまりにすごく、石田と警視庁SP落合義明を演じる江口洋介(50)が真っ白になったという。島崎の上司村田を演じる上川隆也(52)と木村が撮影を振り返った。

 上川 (島崎が)想定する警護手順の中で、爆発するシーンが、遠くで爆発しているように見えて、実はすごかった。江口さんが真っ白になって帰ってきた。

 木村 すみません、俺が空想したがために(苦笑い)石田さんも江口さんも、ちりで真っ白。爆破をする特殊効果のスタッフが、いつもより気合が入っていたらしくて(火薬の)量が半端なかったらしいです。

 人間描写の名手として知られ、03年のフジテレビ系「白い巨塔」や14年の同系「昼顔」などを手がけた脚本家の井上由美子氏と木村が、05年の同系「エンジン」以来、13年ぶりにタッグを組んだことでも話題の「BG-」。斎藤工(36)、菜々緒(29)、間宮祥太朗(24)が演じる身辺警護課の面々と島崎との掛け合いや、民間の警護を真っ向から否定する落合との激突など、幾重にも織りなす人間ドラマは濃密だ。島崎が、過去の失敗から、やや後ろ向きの立ち位置でもあり、周囲のキャラクターもしっかり立ち、それぞれの魅力も感じられる、見どころあふれる作品だ。【村上幸将】