舞台、映画、ドラマなどで幅広く活躍した女優角替和枝(つのがえ・かずえ)さん(本名・柄本和枝=えもと・かずえ)が、がんのため27日早朝に都内の自宅で亡くなったことが同日、分かった。64歳。夫柄本明(69)長男柄本佑(31)次男柄本時生(29)、佑の妻安藤サクラ(32)もそれぞれ俳優として活躍する芸能一家。通夜、葬儀は、本人と家族の希望で密葬で営まれる。

関係者によると、角替さんはこの日午前5時ごろ、柄本、佑らに見守られて息を引き取った。時生は海外で仕事中のため、最期をみとることはできなかったという。

角替さんは約1年闘病していたが、講師を務める演劇教室には顔を出していたという。亡くなる前の3カ月間ほどは仕事は入れていなかった。ツイッターの最後の投稿は今年7月5日で、仕事現場での待ち時間に自分の足を撮ったちゃめっ気ある内容だった。

角替さんは、女優を目指して静岡から上京、つかこうへい事務所をへて、夫柄本が主宰する「劇団東京乾電池」に参加。26歳の時に柄本と結婚した。おしどり夫婦、仲の良い芸能一家として知られており、周囲への叱咤(しった)激励も欠かさなかった。

NHK連続テレビ小説「まんぷく」(月~土曜午前8時)でヒロインを演じる安藤は日刊スポーツのインタビューに、オファーを受けるかどうか迷っている時に、角替さんが「大厄の年だからこそ大役をやるべき」と背中を押してくれたと明かしていた。

角替さんは09年にうつ病と診断され、投薬治療や柄本との二人三脚で克服したことを明かしている。情報番組で当時のことを振り返った角替さんは、見守ってくれた柄本について「ありがたいです。優しい」と感謝していた。

優しい母親役から個性的でおせっかいな中年女性役、舞台、映画、ドラマ、時代劇、現代劇と、どんな作品にも溶け込むとともに、存在感と愛嬌(あいきょう)が共存する数少ない役者だった。

◆角替和枝(つのがえ・かずえ)本名・柄本和枝。1954年(昭29)10月21日、静岡県生まれ。つかこうへい事務所を経て、劇団東京乾電池に所属。04~06年まで放送されたNHKバラエティー番組「コメディー道中でこざる」はレギュラー出演。12年からは「バファリンA」のCMにも起用された。81年に俳優柄本明と結婚、2男1女を出産。長男佑と次男時生は俳優。