【米ロサンゼルス24日(日本時間25日)=千歳香奈子通信員】第91回アカデミー賞授賞式がドルビーシアターで開かれ、「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレック(37)が、主演男優賞を受賞した。マレックは、人気ロックバンド、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーを熱演しての初受賞。ほかに編集、録音、音響編集賞を合わせ最多4冠に輝いた。

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名前が読み上げられたマレックは、恋人役を演じ、実生活でも交際中のルーシー・ボイントン(25)に熱いキスで祝福された。初のオスカー像を手に、開口一番「お母さんに感謝します。大好き。信じられない。伝説に関われて光栄です」と喜びを爆発させ「父も見てくれていると思う」と、天国の父に感謝した。

クイーンの軌跡を描いた同作。臨場感あるライブシーン、スターダムを駆け上がる華やかさと苦悩、人気曲の数々…と、ヒットの要因はさまざまだが、マーキュリーを演じたマレックの力は大きい。

マレックは、義歯をつけたり体重を増やしたりといった外見だけでなく、動きや振りも完全に再現した。実在の人物そっくりに演じ、オスカーを獲得した例は多い。近年ではリンカーン元大統領を演じたダニエル・デイ・ルイス、スティーブン・ホーキング博士を演じたエディ・レッドメイン、ウィンストン・チャーチル元英首相を演じたゲイリー・オールドマンが主演男優賞を取った。

忠実な再現が珍しくない分、評価のハードルは高くなったと言ってもいい。マレックは、両親がエジプトからの移民である自分のルーツを、タンザニアのザンジバル生まれのマーキュリーに重ねることで、人物描写に深みを出した。スピーチでは「私も移民の子。これは私自身の映画。生涯、ずっと大切にしていきます」と語った。

ピザの宅配のバイトをしていた時、ピザの箱に自分のプロフィルと写真を張って業界人に宅配し、役をつかもうとしたこともあった。個性的な顔立ちのため似たような役ばかりくることもあったという。マレックは「アイデンティティーに悩んでいるすべての人へ。僕たちは、ゲイで移民でそして人生を自分らしく生きたい人の映画を作りました。今夜僕がここにいることは、こういう物語を僕たちが望んでいるからです」と、誇らしげに語った。客席からはオープニングライブに出演したクイーンのメンバーも拍手を送った。

途中までメガホンを取っていたブライアン・シンガー監督が解雇され、未成年者に対するセクハラ疑惑が報じられるなど、製作危機もあった。しかし、騒動を乗り越え最多4部門を受賞。日本では興収116億円を突破し、4カ月近いロングランが続く。「ボヘミアン・ラプソディ」の伝説はまだ続きそうだ。

作品賞には人種差別をテーマにした「グリーンブック」(ピーター・ファレリー監督)が輝き、有色人種の俳優や監督らが多数受賞するなど、マイノリティーの躍進が目立った。