X JAPAN、YOSHIKIの美意識の高さを垣間見た。

先日行われたYOSHIKIプロデュースのワイン「Y by Yoshiki California」リリース発表会でのこと。醸造家のロブ・モンタヴィJr.氏と発売するワインのこだわりや味などについてトークしていたのだが、ある瞬間にYOSHIKIの顔つきが変わった。

YOSHIKIが座るソファの横には発表されるワインのボトルとワイングラス、ペットボトルのミネラルウオーターが並んでいたのだが、ふたを開けて水を口に含んだ後、何かに気付いたような表情をし、傍らのスタッフに声を掛けた。

水が口に合わなかったのか、はたまたワインの味を邪魔する銘柄と判断したのか…などと勝手に考えていると、スタッフが水の入ったグラスを片手に戻り、YOSHIKIの飲んだペットボトルを下げていった。

しかし問題は解決していなかったようで、トーク中も2度3度とスタッフを呼び、小声で何かを指示している。YOSHIKIの隣に座るモンタヴィJr.氏のサイドテーブルも同じセッティングになっていたのだが、そのテーブルを指し何かを伝えている。まもなく現れたホテルスタッフがモンタヴィJr.氏のテーブルに水の入ったグラスだけを置き、立ち去ろうとした瞬間、じれたYOSHIKIがいよいよ声を上げた。

「テーブルにペットボトルがあったら美しくないでしょう? それを下げて欲しい」

水の味ではなかった。商品が映像や写真に撮られた時、どう見えるかが問題だったのだ。最初に並んでいたペットボトルはラベルが貼られていたわけでもなく、パッと見て銘柄が分かる大衆的なものでもなかった。凹凸のない、むしろスタイリッシュなボトルだったと思う。それでもYOSHIKIの美の基準を満たさなかったのかもしれない。それだけワインに情熱を注いでいるということでもあるのだろう。ホテルスタッフがペットボトルを下げると通常運転に戻り、和やかに会話を再開した。

発表会後、取材に応じたYOSHIKIは、自身について「僕はファッションも音楽もワインもやるから、何が本業と言われるんですが、全部を含めて芸術を表現したい。聴覚、視覚、味覚、五感を刺激したい。そのひとつとしてこのワインも続けていきたい」と語った。納得のいくワインを作って終わりではなく、完成を報告する発表会にも視覚的な美しさを求めていた。【遠藤尚子】