10日に肺がんのため亡くなった映画監督の大林宣彦氏(享年82)の妻で映画プロデューサーの大林恭子氏(81)が14日、コメントを発表した。

大林監督は夢の中でも映画撮影をしていたそうで、恭子氏は「監督が繰り返した『皆さん、ありがとう』を監督の遺言としてお伝え致します」とコメント。さらに「彼にあと3倍の映画の時間をあげたかった。大林作品を愛してくださったすべての人に監督の『ありがとう』をお伝えしたく存じます」と記した。関係者によると家族葬は13日に営まれたという。また、17年に撮影された2人の写真も公開された。

以下コメント全文。すべて原文ママ。

この度、監督は、次回作のロケハンに出かけました。連日連夜、映画の夢の中、撮影現場にいるらしい監督は元気な声で「ヨーイ、スタート。カット。オーケー。皆、お疲れさん、ありがとう」。毎晩その楽しそうな声に私は目を覚まし、「お疲れさま、ありがとう」と答えていました。数日前、真夜中に講演らしきお話をしていました。そんな中「岩井君、手塚君、犬童君、塚本君たちが映画をつないで平和な世の中に……」と、とぎれとぎれ聞こえてくる言葉、いつもと変わらない最後の言葉「ありがとう」。そして、監督が繰り返した「皆さん、ありがとう」を監督の遺言としてお伝え致します。

私との63年間の日々は、文学と音楽と映画の日々。いつも監督の口癖は「眠るのは死んでから充分眠れるのだから眠るなんて勿体ない」と本当に眠りませんでした。今頃、ロケハンの途中の天国村で、黒澤明監督や本多猪四郎監督、立川談志さん、高畑勲監督、和田誠さんにお会いして、映画談義が尽きることなく、やっぱり眠っていないのではと思います。まだまだあふれる才能の持ち主、彼にあと三倍の映画の時間をあげたかった。大林作品を愛して下さったすべての人に監督の「ありがとう」をお伝えしたく存じます。「ありがとう」の言葉に、毎晩、私からも監督に「ありがとう、愛して」と真夜中の涙。すると「お休み……」と返事が…。今頃ロケハンで見つけてくれていることと思います。2020年4月14日 大林恭子