作曲家・古関裕而氏をモデルとしたNHK朝の連続テレビ小説「エール」は新型コロナウイルスの影響で現在放送休止中ですが、6月16日から収録が再開されています。感染予防をし、放送再開に向けてキャスト、スタッフが一丸となっています。同番組チーフプロデューサー(CP)の土屋勝裕氏(50)に、放送再開後の見どころを聞きました。【笹森文彦、竹村章】

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3月30日にスタートした「エール」は、新型コロナウイルスの影響で収録を中断したため、6月27日でいったん放送を休止した。放送再開に向け再スタートした収録は、徹底した感染予防の中で行われている。

土屋CP 当然、平時より時間がかかってしまいます。1日で1話分ぐらいを撮っていかないと間に合わない厳しい状況ですが、我々としても何としても最後まで放送したい。頑張ってやっているところです。

ドラマは戦争前で休止した。今後は主に戦中戦後で物語が展開する。

土屋CP (放送再開の)後半は大きく言うと3つポイントがあると思っています。1つ目は戦争という時代に突入していく中で、主人公や仲間たちがどう困難を乗り越えようとしていったのか、です。困難な時代を描かずに行ってしまっては、古山裕一のドラマとしては物足りない。

古山のモデルの古関氏は「露営の歌」「暁に祈る」「若鷲の歌」など数々の戦時歌謡を作曲した。戦争という“空気”が日本中を覆っていた時代だった。

土屋CP 戦争の時代にみんなを励ます曲は、ある意味軍に協力するような形になってしまう。そこに主人公が向き合わざるを得ないところは、避けて通れないドラマと思っています。自分たちができることを精いっぱいやろうとする姿は、視聴者の皆さんにとって元気の出るエピソードになっていく部分もあるかなと思っています。

2つ目のポイントは「敗戦の挫折をどう乗り越え、どんな曲をつくっていくのか」。3つ目が「乗り越えた先の、古山裕一の歌をみんなが歌う明るい時代の到来」。鎮魂と再起の名曲「長崎の鐘」。ヒット曲の「君の名は」や「高原列車は行く」。夏の甲子園の「栄冠は君に輝く」。そして「オリンピック・マーチ」と、戦後の数々の古関氏の名曲が登場しそうだ。

土屋CP 3つ目がドラマとしては一番楽しく盛り上がるところと思うので、早くたどり着きたい。そのためには、その前の苦しい時代や乗り越えようとする姿を、ちゃんと描くことだと思っています。

「エール」の当初の放送予定は9月25日まで。再開を心より待ちたい。(おわり)