吉永小百合(75)の主演映画「いのちの停車場」(成島出監督、5月21日公開)のエンディングテーマを、ギタリスト村治佳織(42)が作曲したことが1日、分かった。同曲は歌詞がなく女性歌手が声だけで歌うボーカリーズだが、シンガー・ソングライター小椋佳(77)が作詞し、応援歌として完成させ、映画と同じ「いのちの停車場」をタイトルにしたことも分かった。

村治の楽曲を元に、もう1曲、応援歌を作ることを企画したのは、小椋と40年来の付き合いがあり、20年に急逝した東映の岡田裕介会長(享年71)。小椋は1月に自身のラストアルバム「もういいかい」をリリースしながら、同会長の遺志を受けて特別に作詞を快諾した。

岡田会長は、20年夏に村治に作曲をオファーした。そして村治のデモテープを聴き、楽曲の素晴らしさに非常に満足し「エンディングとしては歌詞のない女声ボーカリーズを採用し、それに歌詞を付けて制作できないか」と提案。その後、40年来の親交がある小椋に正式に作詞を依頼しようとしていたが、デモテープを聴いてから5日後の20年11月18日に急逝。東映の関係者が今年の年始に、小椋に作詞を依頼した。

小椋と岡田会長は、71年の小椋の初アルバム「青春 砂漠の少年」のジャケット写真とナレーションを、当時俳優だった同会長が務めてから信頼を寄せ合ってきた。同作のジャケット写真が当時、顔出しをしていなかった小椋の肖像だと誤解されて話題を呼んだ逸話もある。

80年には同会長がプロデュースし、吉永と初めてタッグを組んだ映画「動乱」の主題歌「流れるなら」の作詞、作曲を小椋が担当。12年「北のカナリアたち」の応援歌「あなたに逢えて」、18年「北の桜守」テーマソング「花、闌の時」など、吉永が主演し、同会長がプロデュースした作品に数々の音楽を提供。同会長も思い入れのある作品には小椋の音楽が欠かせないというほどの信頼を置き、小椋が1月にリリースしたラストアルバム「もういいかい」のスペシャルサンクス欄にも、岡田裕介の名が刻まれている。

小椋は「本作の製作総指揮を執っていた岡田裕介氏とは映画『動乱』をはじめ数々の作品を通じての親しい仲であり、突然の別れに、驚きと無念さを感じております」と岡田会長への思いを語った。その上で「今回の『いのちの停車場』は安楽死がモチーフであり、実に難事業。安楽死を施す行為とは、ターミナルケアの帰結として、その痛みあるいいはすでに無意味な人生からの解放なのかそれとも単に罪深い殺人なのか極めて困難な問題です」と作詞するにあたり、非常に困難なテーマだったと吐露した。

そして「この映画でも安楽死は是か非かの問いについて解答を提供してはいません。むしろ観客の皆さんならどう考えるかと問いかけている映画ということが言えるでしょう。とにかく詩をひねり出すのに数日かかってしまいました」と続けた。

その上で、楽曲のタイトルについて「私としては『いのちの停車場』を、人生の終点を目的地とするバスを待つ間に、一服するか一息ついて、ひと時『生』について考えを巡らせる場と捉え言葉を紡いでみました。悩んだ末に歌のタイトルも『いのちの停車場』そのものとさせていただきました。この歌が映画の深みを増す一助となることを祈りつつ」と説明した。