吉永小百合(75)の主演映画「いのちの停車場」(成島出監督、5月21日公開)のエンディングテーマを、ギタリスト村治佳織(42)が作曲したことが1日、分かった。村治にとって、15歳でCDデビューして以来、本格的な作曲での楽曲提供は音楽人生で初めて。20年11月に急逝した東映の岡田裕介会長(享年71)から直接、オファーを受け、快諾し、同会長の示した「人生」というテーマを表現すべく、全身全霊で作曲した。

村治と岡田会長との接点が生まれたきっかけは、吉永だった。村治は、吉永がライフワークとして86年からボランティアで続ける原爆詩の朗読のCDとして、97年にリリースした「第二楽章」制作の際、収録に参加した。吉永が村治の演奏を聴き、BGMに使いたいと手紙を書き、関係がスタートした。その後、村治が原爆詩朗読のチャリティーコンサートに参加したり、プライベートで旅行もする関係となり「姉」「妹」と呼ぶ関係となった。

13年に村治が舌腫瘍と診断され、全公演予定をキャンセルして療養を続けた際、心の支えになったのは吉永だった。村治は翌14年、吉永が初めてプロデューサーを務め、成島監督が手掛けた主演映画「ふしぎな岬の物語」のメインテーマ「望郷」の演奏を担当し、カムバックを果たした。同作が、村治と岡田会長の縁となった。

村治は「『ふしぎな岬の物語』への参加を通して岡田裕介会長との出会いの機会をいただきました。『今回の映画は、作曲で参加してほしい』と昨年初夏に会長より伺いました」と岡田会長からのオファーの経緯を語った。その上で、同会長から受けたアドバイスが、作曲の大きな後押しになったと語った。

「エンディングテーマというスケールの大きさを背負い、考え込んでしまい、なかなかメロディーが浮かんでこなかった時に、『映画の内容を音楽で表そうとするのではなく、あなた自身の経験で感じた不安、その先の希望、見えた青空、やっと登った頂上からの絶景、などを頭に置いて書いてみたらどうか』と会長よりアドバイスをいただき、随分と気持ちが和らぎ、程なくして曲の元となるメロディーを完成させることができました」

その上で「メロディーを作る際には、13年に私が大病を経験したときに、いつも近くで支えてくださった小百合さんへの感謝の思いも、常に心の柱としておりました」と吉永にも感謝した。

そして「いよいよあと少しで音楽も完成というところで会長の突然のご逝去。直前まで音楽のことでご連絡のやりとりをしていたので、今でも、天に召されてしまったことが信じられませんし、日を追うごとに、もういらっしゃらないのだという哀しみが大きくなっています。レコーディングの時にも、ずっと会長のことが頭にありました」と、音楽が完成する前に岡田会長が急逝したことを悔やんだ。

村治は「この曲の存在が私にとって、命について想う、まさしく“いのちの停車場”となりました。成島組に再び参加させていただき、心より御礼申し上げます。そして多くの方々にこの映画をご覧いただければと切に願っております」とファンに呼びかけた。