世界3大映画祭の1つ、ベルリン映画祭の各賞が5日、オンラインで発表され、最高賞の金熊賞を争うコンペティション部門で、濱口竜介監督(42)の新作映画「偶然と想像」が銀熊賞(審査員大賞)に輝いた。

「偶然と想像」は、偶然と想像をテーマにした3話オムニバス映画で、濱口監督初の短編集となる。同監督が、自身の15年の映画「ハッピーアワー」などをプロデュースした高田聡プロデューサーとともに企画を立ち上げ、19年夏から約1年半をかけて製作。脚本も全て同監督自身が手掛けた。

第1話「魔法(よりもっと不確か)」には、若手女優の中でも昨今、注目度が増している古川琴音(24)と中島歩(32)玄理(34)が出演。第2話「扉は開けたままで」には、屈指の演技派として多数の映画に出演を続ける渋川清彦(46)、森郁月(32)と甲斐翔真(23)が出演。第3話「もう一度」には占部房子(43)と河井青葉(39)が出演する。

濱口監督は「『偶然と想像』は、私にとっての初の短編集です。短編映画という形式にはずっと大きな可能性を感じていましたが、現在の映画製作サイクルの中では短編用の上映枠がないという『出口』の問題がありました。そのため今回は、『偶然と想像』という統一したテーマのもと3話を制作し、長編映画サイズの短編集となりました」と企画について趣旨を説明している。

濱口監督は、18年に「寝ても覚めても」が第71回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品されており、世界3大映画祭のコンペ部門出品は2度目。20年のベネチア映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞した、黒沢清監督の「スパイの妻」では、野原位氏とともに企画と脚本を担当しており、この3年で世界3大映画祭のコンペ部門に3作品が出品された。「偶然と想像」はベルリン映画祭での上映がワールド・プレミアとなっており、日本国内での公開時期は未定。

ベルリン映画祭は例年、2月に開催されるが、今回は新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて、11~21日に予定されていた映画祭を、3月と6月に2分割して開催する。1~5日までの日程でオンラインで業界関係者向けの試写を行い、コンペ部門の受賞作などを決めた。そして6月9~20日にサマースペシャルと題した上映イベントを、ベルリン市内の10会場で開催し、授賞式を開催する。

◆濱口竜介(はまぐち・りゅうすけ)1978年川崎市生まれ。東京大卒業後、商業映画の助監督などを経て、東京芸術大大学院映像研究科に入る。2008年、修了制作作品「PASSION」をサンセバスチャン国際映画祭に出品。東日本大震災の被災者をインタビューしたドキュメンタリー「なみのおと」「なみのこえ」などを共同監督。「ハッピーアワー」は15年のロカルノ国際映画祭で最優秀女優賞を受賞、「寝ても覚めても」は18年のカンヌ国際映画祭でコンペティション部門に選ばれた。昨年のベネチア国際映画祭で黒沢清監督が監督賞を受賞した「スパイの妻」では脚本を共同執筆した。