乃木坂46樋口日奈(23)の初主演舞台「フラガール -dance for smile-」(東京・Bunkamuraシアターコクーン)が、4月12日に千秋楽公演を迎えた。カーテンコールでは、スタンディングオベーションを受けた。ひたむきな演技と本格的なフラダンスはもちろんだが、作品のテーマも含めて、深く考えさせられる部分があった。

06年公開の大ヒット映画の舞台化で、19年初演の舞台の再演となる。エネルギー革命真っただ中の1965年(昭40)、福島・常磐炭坑が舞台。燃料の主役が、「黒いダイヤ」とまで呼ばれた石炭から、石油や天然ガスへと変化していく激動の時代だ。炭坑は大幅な規模縮小を迫られ、労働者らが大量にリストラされていく。

新しい雇用を創出するため、町おこしで常磐ハワイアンセンター(現・スパリゾートハワイアンズ)建設計画が立ち上がる。炭坑町で育った少女たちが、フラダンスチームを結成し、厳しいレッスンを経て一人前のダンサーに成長していく感動の物語だ。

劇中、ハワイアンセンター誕生の立役者、吉本が、炭坑労働者から建設を猛反対されると、「オイルの波にのまれる前に、こっちから仕掛けるんだっぺ!」と強く主張して反論するシーンがある。もともと炭坑労働者だった吉本は、仲間たちから「裏切り者」とまで呼ばれたが、強い信念で建設計画を実現させる。

千秋楽公演のカーテンコール、樋口はキャストや観客への感謝を伝えた上で、涙ぐんでスピーチした。

「時代の変化に流されてしまいそうになったり、未知の世界に動きだすときは、いろんな人の、いろんな立場の人の葛藤があると思うんですけれども。手に手を取り合って、みんなで信じる道をまっすぐ行けば、いつかはきっとみんなで笑いあえる日が来るんだなということを、あらためて、この舞台から教えてもらいました。まだまだ大変な世の中ではありますが、この舞台が皆さんにとって少しでも明るく前向きなパワーになることを願っています」

仮にも新聞社で働いている1人の社員としては、「時代の変化」という言葉に少し敏感になっている部分がある。インターネット隆盛、紙媒体の新聞にとっては厳しい時代だが、一般紙も、専門紙も、ブロック紙も、スポーツ紙も、それぞれが試行錯誤し、新しい試みにトライしているように感じる。内輪の話で恐縮だが、日刊スポーツは4月1日、日本最大級のデジタルメディアとなる新会社「日刊スポーツNEWS」を設立した。

IT革命もそうだが、コロナ禍のような全く予測できないようなことも起こり得る。日々、さまざまな業界の人々が時代の変化の影響を受けながら、工夫を凝らし、努力しながら乗り越えていくのが人類の歴史なのかもしれない。

新聞社の社員として、そして1人の社会人として、「波にのまれる前にこちらから仕掛ける」という吉本の言葉と、「みんなで信じる道をまっすぐ行けば、いつかはきっとみんなで笑いあえる日が来る」という樋口のスピーチを、忘れないようにしていきたい。

【横山慧】