「眠狂四郎」「古畑任三郎」などの人気ドラマシリーズで知られる俳優田村正和(たむら・まさかず)さんが4月3日、心不全のため、都内の病院で亡くなったことが18日、分かった。77歳。葬儀、告別式は親族で行った。喪主は妻和枝(かずえ)さん。故人の希望で、お別れの会を行う予定はない。

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田村さんはここ数年、表に立つ俳優業から身を引き「十分、やり終えた」と話していたという。最後の作品は18年フジテレビ系「眠狂四郎 The Final」だった。

生前所属していた事務所関係者は、日刊スポーツの取材に「最後に田村さんと話したのは2月ですが、元気な様子だったので驚いています。そういう(亡くなる)ことになるとはまったく思いませんでした」と話した。田村さんは風邪をこじらせせきをしていたそうで、空せきなんだよねと話し、検査入院すると明かしたという。新型コロナウイルスのPCR検査も何度も受けていたそうで、新型コロナ感染症ではなかったとした。

生前からプライベートをほとんど語ることがなかったが、2年前に女性週刊誌の取材を受けた時には、以前、心臓手術をしたことを明かしていた。もともと心臓に持病があり、90年には2週間、97年には数カ月休養したことがあった。同関係者は「風邪をこじらせて、免疫力が弱まっていたのかもしれません」と推測した。

田村さんは目の前の1作に全力を尽くすという思いを常に持っていた。15年、テレビ朝日系「復讐(ふくしゅう)法廷」での取材の時には「これが最後の作品になるかも。この2~3年、同じ気持ちでやっています」と語った。

大正から昭和にかけて活躍しバンツマの愛称で人気だった阪東妻三郎を父に持ち、長兄の故田村高広さん、弟田村亮(74)も俳優という芸能一家に育った。松竹の若手スターとして映画で人気を得、フリーになってからはテレビを中心に活躍した。

「眠狂四郎」に代表されるようなクールなヒーローが登場する時代劇から、「うちの子にかぎって…」「パパはニュースキャスター」などのコミカルなホームドラマ、「ニューヨーク恋物語」などの大人のラブストーリーなど、さまざまなジャンルの作品に出演し、演技の幅を広げた。

94年に始まった三谷幸喜氏脚本の「古畑任三郎」シリーズは、田村さんの代表作になった。独特の語り口調やしぐさ、鋭い観察眼を持ち、どこか憎めないキャラクターが人気になり、長年にわたってシリーズやスペシャル版が制作された。田村さんの口調やニヒルな表情をものまねされることも多く、多くの人に愛された。

どんな作品に出ても、田村さんは上品さ、ダンディーさを失わなかった。70歳を超えてなお主演を張り続けた、正統派二枚目スターだった。

◆田村正和(たむら・まさかず)1943年(昭18)8月1日、京都生まれ。60年、兄田村高広さん主演映画「旗本愚連隊」に出演。翌年、松竹と専属契約し映画「永遠の人」で本格デビュー。66年にフリーに。ドラマの代表作は「木下恵介劇場/冬の旅」「眠狂四郎」「うちの子にかぎって…」「パパはニュースキャスター」「古畑任三郎」シリーズ、「オヤジぃ。」「三億円事件」など、映画は「日本の黒幕」「ラストラブ」など。成城大学卒業。