東京国際映画祭コンペティション部門出品「三度目の、正直」(野原位監督、22年1月公開)の舞台あいさつとティーチインが3日、都内の角川シネマ有楽町で行われた。

主演の川村りらは「神戸の小さな街で仲間と一緒に作った映画が、こういう大きな場で上映でき、うれしい」と感激した。一方で、野原位監督(38)と行った共同脚本については「あまりにも物理的に大変で、寝る間もなく。演じている時間以外は、打ち合わせと脚本の改稿に費やしていたので」と振り返った。

「三度目の、正直」は、3月のベルリン映画祭で「偶然と想像」が審査員大賞(銀熊賞)、7月のカンヌ映画祭では「ドライブ・マイ・カー」が邦画初の脚本賞を受賞した、濱口竜介監督(42)がロカルノ、ナント、シンガポールをはじめ数々の国際映画祭で主要賞を受賞した、15年の「ハッピーアワー」で共同脚本を務めた野原監督の商業映画デビュー作。川村をはじめ「ハッピーアワー」に出演した俳優陣が出演しており、同監督は「『ハッピーアワー』の役者さんがいっぱい出ている。ベースにある基礎体力に、みなさん合わせていく感じ」と説明した。

川村との共同脚本を行った事情について、野原監督は「川村さんと2人で共同脚本。ここで言うのも何なんですけど、撮影の直前でも完成していなくて。いったん、シナリオはありましたけど、撮りながら直していくスタイル」と説明。その上で「川村さんは演じながら(脚本を)直してという、とても大変な状況だったと思いますけど、それもあって最後まで粘れた感じ」と川村に感謝した。

川村は「別の企画が最初に走っていて、脚本名義で出演は小さな役の予定だった。いろいろ変更があって、この脚本で行くとなった時に、予想以上の分量を書くことになった」と振り返った。その上で共同脚本が演じることに影響を与えたかについては「演じることに、どれくらい影響しているかは今でも分からない。もう少し時間がたって、見直したらどういう作業か分かるかなと思いますけど」と語った。

「三度目の、正直」は、記憶を失った青年と周りにいる人々の秘めた思いが、神戸の街で交錯する群像劇。野原監督は濱口監督とともに、東京芸術大大学院映像研究科の師匠である黒沢清監督の「スパイの妻」の企画を持ち掛け、脚本を担当し、同作は20年にベネチア映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞している。

この日は、同作で俳優デビューしたラッパーの小林勝行も登壇した。